働かない配偶者の経済的DVは離婚事由になる? 町田オフィスの弁護士が解説
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町田市では、DV(ドメスティック・バイオレンス)に悩む方への電話相談窓口を設けています。DVというと、まず思い浮かぶのが殴る蹴るなどの身体的暴力、もしくは無視をしたり怒鳴ったりする精神的暴力でしょう。しかしDVには、お金を渡さず困窮させ自由を奪おうとする経済的DVも含まれています。
経済的DVは専業主婦にとっては特に死活問題ですし、お子さんがいる場合はさらに問題は深刻化します。そこで今回は、経済的DVは離婚事由になるのか、離婚する場合、慰謝料の他にどのような費用の請求が可能か、具体的な離婚手順についても町田オフィスの弁護士が解説します。
1、経済的DVとは
経済的DVとは、身体的な暴力行為とはことなり、他人からは見えにくいものです。しかし、精神的、社会的に深刻な影響を及ぼします。
経済的DVをしている当人は多くの場合、DVをしている自覚はありません。また、被害を受けている方も、お金の相談は外部にはしにくいことから、社会的にも孤立して問題が表面化せず、深刻化する傾向にあります。まずは、配偶者からのどのような行為が経済的DVにあたるのかを確認しましょう。
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(1)生活費を渡さない
家庭の財布を一方の配偶者が握っており、明らかに生活をするのに不十分な額しか生活費としてわたさないことが特徴です。給与明細や通帳なども見せてもらえず、配偶者の機嫌によってさらに生活費が少なくなることもあります。
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(2)お金を何に使ったかを追及される
お金の使途を細かく確認されるだけでなく、購入したものに対して不要だとケチをつけられます。レシートを確認し必要だと判断したものにのみ、お金を払うようなケースもあります。
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(3)妻が働くことを嫌がる
十分な生活費を渡さないにもかかわらず、妻が外に出て働くことを許さないことは、経済的DVです。妻を支配したい、妻が自由なお金を持つことを許せないという気持ちが強くあるようです。
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(4)借金を作る・働かない
妻には使うお金を制限するのに自分は借金をし、自分の好きなものには多額なお金を使いがちです。また、働けない理由がないにもかかわらず妻の収入に頼って生きようとすることも経済的DVに該当します。
2、経済的DVは離婚事由になる?
経済的DVは、冒頭で述べたように離婚事由に該当する可能性があります。
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(1)民法上の離婚事由
民法第752条では、夫婦に互いの相互扶助義務を定めています。これは、夫婦生活のために必要な経費などを互いに協力して、やりくりしていくことを意味しています。生活費を渡さない、理由もなく働かないといった経済的DVは、それに反する行為と判断される場合があります。
また、民法第770条第1項第5号では離婚事由のひとつに「婚姻を継続し難い重大な事由」を定めています。相手を意図的に経済的に困窮させる行為は、この離婚事由に該当する可能性があります。 -
(2)弁護士に相談を!
しかし、経済的DVはどこからが離婚事由となるのか、それぞれの生活レベルなどの問題もあり、判別が難しい問題です。単純に、「相手方が病気などにより働けないことは仕方がない」と判断される可能性があるためです。ご自身の状況を第三者の冷静な視点で判断しておくためにも早めに弁護士に相談することをおすすめします。
経済的に困窮されている方は弁護士を雇うことが難しいと考えられるかもしれません。しかし、証拠を集めて経済的DVがあったことを証明できれば、今後の生活費や慰謝料などを受け取れる可能性が出てきます。離婚に至れば、財産分与を受けられるケースもあるでしょう。お子さんがいる場合は将来への影響も心配でしょうし、一刻も早く弁護士に相談されることをおすすめします。
3、法による解決を目指すとき、請求可能なもの
現時点で受けている経済的DVを、法律に基づき解決しようとしたとき、配偶者に対して請求できるものがあります。ただし、相手が無職で貯金や財産もない場合は、ない袖は振れないため回収できないこともあるでしょう。
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(1)婚姻費用
婚姻費用とは、簡単にいえば生活費です。離婚が成立するまでは婚姻中であることから、夫婦には相互扶助義務があり、生活に必要な費用を受け取る権利があります。婚姻費用分担請求ともいい、同居しているか別居しているかは問いません。主に収入を得ている側が、生活のため、配偶者に対して渡す金銭です。ここに性別は関係ありません。
婚姻費用の分担は夫婦の話し合いで決めることもできます。しかし、話し合いが難航する場合は家庭裁判所で調停の申し立てを行います。調停を通じて婚姻費用分担請求が認められれば、法的な拘束力が生じるため、配偶者が支払わない場合、給与差し押さえなどの手段を取り、強制的に支払いをさせることが可能です。
離婚を視野に入れているときは、未成年の子どもがいて親権を取る場合は養育費も請求可能です。また婚姻中に築き上げた、土地や建物などの不動産、預貯金などの共有財産についても、財産分与を受けられます。 -
(2)慰謝料
経済的DVを原因として慰謝料を請求できるのは、法定離婚事由に定められた「悪意の遺棄」が認められるケースです。これは夫婦間に3つの義務があることが前提となっています。
- 同居義務
- 協力義務
- 扶助義務
手持ちがあるにもかかわらず必要な生活費を渡さない経済的DVの場合、同居をしていたとしても生活面で協力しているとはいえません。また相手が理由なく仕事をしていない場合、生活費を渡さなければ当然生活は成り立ちませんので、扶助義務も果たしていません。
4、経済的DVで離婚する場合の手続き
経済的DVを理由に離婚をする場合の、具体的な手続きについてご紹介します。
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(1)証拠集め
働かない、生活費を払わないといった経済的DVに対して、話し合いで解決するのであれば離婚を考えることもないでしょう。経済的DVをしている自覚がない配偶者に離婚をしたいと申し出たところで快諾してくれる確率は低いと考えられます。
そこで調停などに発展することも見据えて、まずは証拠集めを行いましょう。口頭でいくら経済的DVだと主張してもそれが立証できないと、第三者に事実だと理解してもらうことができません。経済的DVを立証するためには以下のような証拠を集める必要があります。
●家計簿
配偶者からもらった生活費でやりくりができていないことを証明する必要があります。
●通帳の控え
生活費の振り込みの金額の証明になります。また、減額や停止されたことの証明にもなります。
●ボイスレコーダーなどで録音したもの
お金に関する暴言、妻に働かせない、配偶者が働かないといったやり取りがあり、夫婦生活の継続が困難であることを証明します。
●日記など
ギャンブルなどで散財したことを証明するため、日時なども記録しておきましょう。相手側が働ける状態であるにもかかわらず働いていないときは、本来は働けることがわかる写真や画像、SNSのやり取りなどを残しておくことも有用です。
この他、相手に送ったメールや手紙、相手からのメールや手紙など、証拠となりそうなものはすべて残しておきましょう。家計簿や日記などは、できるだけ細やかに記載しておくことをおすすめします。 -
(2)離婚協議
まずは、集めた証拠をもって双方が話し合いを行います。配偶者が離婚することに同意すれば、具体的に慰謝料や婚姻費用、財産分与、年金分割などについて話し合いを行います。未成年の子どもがいる場合は、親権や養育費などについても同時に決めておきましょう。
円満に協議が終わったとしても、離婚後に慰謝料や養育費が約束通り振り込まれないなどの事態が起こる可能性があります。必ず協議離婚合意書を作成し、公正証書にしておくことをおすすめします。 -
(3)離婚調停
双方の話し合いで決着がつかない場合などは、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。
調停とは、第三者である調停委員や裁判官の元で、夫婦生活に関する質問や要望の確認をし、離婚等の問題について話し合いをする制度です。直接顔を合わせることがないので、冷静な話し合いを望めます。条件などについて互いに合意できれば、調停調書が作成されます。 -
(4)裁判
離婚調停を行ったが、相手が離婚を認めない、離婚の条件が合わないといった場合は離婚裁判になります。調停での内容も踏まえ、最終的に裁判官が離婚の可否および慰謝料などの条件を決定します。
これらの一連の手続きは、どの段階でどのように行動することがもっともよい結果になるのか、法的な知識がない方にはわかりにくいものです。そこで、早いうちから弁護士に相談しておけば、スムーズな証拠集めができ、有利な状況で相手との交渉や調停を早期に終わらせることが期待できます。
また、裁判となった場合にも代理人を任せることができます。離婚を考えた場合はすぐに弁護士に相談されることをおすすめします。
5、まとめ
経済的DVはそれが結婚を維持できないまでの状況であるかの線引きが難しいものです。配偶者が働いていなくてもその理由は千差万別であり、あなた自身が働けばよいと認識されてしまう可能性もあるためです。
また、夫婦の協議で離婚をしようにも相手が受け入れてくれない、条件に合意してくれないケースが多く、問題が長引き精神的ストレスがさらに増大しがちです。経済的DVを行う配偶者と離婚したいとお考えの方は、できるだけ早くベリーベスト法律事務所 町田オフィスにご相談ください。数多くの離婚案件に対応している知見を元に、あなたの将来のため、弁護士が最善を尽くします。
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