離婚したら夫婦で飼っていたかわいいペットはどちらが引き取るべき?

2019年10月28日
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離婚したら夫婦で飼っていたかわいいペットはどちらが引き取るべき?

平成31年4月1日、有名女優が13歳年下の夫との離婚を発表しました。夫婦で飼っていた愛犬の世話については、弁護士を入れて契約書を交わしたとのことです。

ペットを飼っている夫婦も多いと思いますが、ペットのいる夫婦が離婚するとき、ペットはどちらが引き取ることになるのでしょうか。また引き取り手の決め方に関する判断基準はあるのでしょうか。

1、ペットは財産分与の対象になるか

ペットを飼っている夫婦が離婚する場合は、ペットはどちらかが責任をもって引き取らなければなりません。しかし、ペットが夫婦にとって子ども同然の存在であっても、ペットはあくまでも法律上は「物」としての扱いになることに留意しておきましょう。

  1. (1)財産分与とは

    財産分与とは、離婚するときに夫婦でともに築き上げてきた財産(共有財産)を分け合うことです。共有財産には、現金や預貯金から車や土地建物に至るまでさまざまなものがあります。車や土地建物などのように、単純に分割できないものについては、離婚時又は別居時における評価額を算出し、その評価額を原則として1/2ずつに分割する、又は夫婦のうちの一方がその財産を受け取り、他方にその財産の評価額の1/2に相当するお金を支払うことになります。

  2. (2)財産分与の対象は?

    財産分与の対象は、結婚生活をスタートさせてから離婚するときまでに、夫婦が取得した財産すべてです。つまり、夫婦で購入した家具や家電、保険(生命保険・医療保険・学資保険など)、車、マイホームなどすべてが対象となります。ただし、住宅ローンやマイカーローンなどの負債も同じく財産分与の対象となる場合もありますので注意が必要です。

    一方、結婚するまで夫婦それぞれが所有していた財産や私物については、財産分与の対象外となるので、離婚後はそれぞれの元に戻ります。

  3. (3)どちらかが専業主婦(夫)の場合と共働きの場合の財産分与

    収入の有無にかかわらず、離婚するときには夫婦それぞれが財産を1/2ずつ受け取ることができます。どちらかが専業主婦(夫)だった場合も、財産を築くことができたのは専業主婦(夫)の内助の功があったからであるとして、共有財産の1/2を受け取ることが認められています。

    一方、共働きだった場合は、夫婦それぞれの貢献度合いも考慮に入れて財産分与の割合が決められることもあります。たとえば、妻が夫と同様に会社勤めをしながらワンオペで子どもの世話をしていた場合は、妻の貢献度を評価して妻の財産分与割合を多くすることも考えられます。実際に、妻が会社勤めをしながら専ら子どもの養育をしていたことを考慮して6:4の割合での財産分与を認めた裁判例があります。

  4. (4)結婚前からどちらかが飼っていたペットの場合

    では、ペットがいた場合はどうなるのでしょうか。ペットは夫婦にとって子どものような存在でも、民法上は「物」として扱われ、財産分与の対象となります。もしそのペットが結婚前からどちらかが飼っていたものだった場合は、飼っていたほうの特有財産となるので、原則として飼っていたほうが引き取ることになります。

  5. (5)結婚後に飼い始めたペットの場合

    飼っているペットが結婚後に取得したものだった場合は、夫婦の共有財産となります。したがって、ペットは財産分与の対象となりますので、夫婦で協議の上どちらが引き取るかを決めることになります。引き取らないほうは、ペットの時価の1/2の金額を対価として受け取る、飼育費の半分を毎月支払うなどを任意で決めることができます。

2、ペットの所有権の判断基準

ペットは法律上「物」と扱われるため、ペットは所有権の対象となります。夫婦が離婚するときに、どちらも「ペットを引き取りたい」という強い希望があった場合、ペットの所有権をどう判断すればよいのでしょうか。

  1. (1)ペットがどちらになついているか

    まず、ペットがどちらのほうによりなついているかが判断材料のひとつとなります。ペットにとって、なついているほうと一緒にいるほうが、今後も安心して暮らせるだろうと予想されるからです。

  2. (2)どちらが飼育費を負担したか

    次に、どちらが飼育費を負担したかということも、判断材料のひとつです。一緒にいる時間は少なくとも、ペットを購入したときの費用や、飼育に必要なペットフードやケージなどの費用をより多く負担したほうが、有利になる可能性があります。

  3. (3)どちらがペットの飼育環境を整えることができるか

    また、どちらがペットのために快適な生活環境を整えてあげられるかも重要です。ペットを引き取りたくても、ペット可ではないマンションなどに引っ越す場合や、実家に引っ越すが実家の家族が動物アレルギーなどの場合は、飼育環境が整っているとは言えないでしょう。

  4. (4)安定した収入があるか

    ペットは基本的に健康保険が適用できず、ペット保険に加入していない場合は、医療費は全額自己負担になるので、多くの費用がかかります。そのため、経済的に安定していることもペットを引き取る上で重要な条件となります。だからといって、専業主婦(夫)が100%不利になるわけではありません。たとえば、専業主婦の妻がペットを引き取って飼育費用を夫に負担してもらう、夫が引き取るが夫がいない間の世話を妻がする、といった方法もあります。

  5. (5)ペットの所有権についてもめる場合は調停・裁判へ

    ペットと一緒に暮らす時間が長ければ長いほど、愛着がわいて夫婦どちらも手放そうとはしないものです。しかし、離婚するのであれば、どちらかが引き取り、どちらかがあきらめなければなりません。財産分与は当事者同士で話し合って決めるのが基本ですが、もめる場合は調停や裁判で決めることが必要です。

3、ペットに関する離婚協議書の作り方

離婚協議でペットのことを決める場合は、飼育費や面会交流などの条件を話し合った上で、合意内容を書面に残しておくことが重要です。離婚協議書の作成は、経験の豊富な弁護士などにお任せするとスムーズです。

  1. (1)ペットの飼育費と面会交流は相手方に求められるか

    離婚のときに相手方にペットの飼育費や面会交流を求めることは、法律上認められていません。つまり、ペットを引き取る側は引き取らない側に飼育費を当然に請求することはできず、離婚後のペットの飼育費はペットを引き取る側が負担することになります。また、ペットを引き取らない側がペットに引き取る側に面会交流を当然に求めることはできません。そのため、ペットの飼育費や面会交流を相手方に求める場合は当事者同士の「契約」の形で取り決めを行います。離婚協議書の中で、財産分与や親権、養育費などの協議事項と併せて、ペットの飼育費や面会交流についても決めておくとよいでしょう。

  2. (2)飼育費について

    ペットを引き取る方が相手方に請求する、ペットの飼育費についても記載することができます。飼育費の取り決めの仕方も、さまざまな方法があります。

    •ペット○○が死亡するまで○円ずつ毎月末、指定口座に振り込む
    • 離婚時に飼育費として一括で○万円支払う
    • 飼育費の代わりに〇〇を譲渡する    など

    離婚協議書には「ペット〇〇の飼育費」との条項名で記載すると、子どもの養育費と区別しやすくなります。また、飼育費を相手方に負担させる場合は、金額及び支払時期、支払方法を明示しておくと後々トラブルを防ぐことができます。

  3. (3)面会交流について

    ペットの面会交流については、以下のようなことを協議の上定めます。面会交流について明確に定めておけば、ある程度相手方の飼育費の滞納を防げる可能性があります。。

    •どちらの自宅で面会するか
    •宿泊の可否
    • 宿泊時の餌やペット用品の用意をどうするか
    •ペットの移動や引き取り手に返すときの方法

  4. (4)引渡し条件について

    また、相手方が約束を守らなかった場合や相手方の事情に変化があった場合に備えて、引渡し条件についても定めておくことも有用です。例えば、以下のようなことが起きた場合にはペットを相手方に引き渡す条項を定めておくことが考えられます。

    • ペット不可のマンション・アパートに引っ越した場合
    • 再婚相手が動物アレルギーだった場合
    • 相手方に事前相談もなく里親に譲渡した場合
    • 生活に余裕がないために相手方に預けていたが、定職に就くなどして経済的に余裕ができた場合

  5. (5)飼育費について強制執行はできる?

    相手方から飼育費の支払いが滞った場合も、強制執行はできます。ただし、強制執行できるようにするには、協議離婚であれば離婚協議書を「強制執行認諾文言付公正証書」にすることが必要です。調停離婚や裁判離婚をした場合は、調停調書や和解調書、確定判決を債務名義として強制執行をすることが可能です。

4、ペットのいる夫婦が離婚するときの4つの注意点

ペットのいる夫婦が離婚する際、ペットに関して注意したいことが4つあります。これらのことを考慮に入れた上で、離婚を検討するようにしましょう。

  1. (1)ペットが犬の場合に登録変更が必要になることも

    犬を飼う場合は、狂犬病予防法により保健所への所有者の登録が義務付けられています。そのため、夫婦のどちらかが所有者として登録されていますが、離婚により飼い主が変わる場合は、所有者登録の変更が必要です。変更の手続きは各地方公共団体によって異なる場合がございますので、お住まいの地方公共団体にお問い合わせ下さい。

  2. (2)どちらも飼えない場合は里親探しが必要

    離婚後に何らかの事情によってどちらも飼えなくなった場合は、ペットの押し付け合いになることも少なくないでしょう。どちらも引き取れない場合は、里親を探さなければなりません。ペットは夫婦の共有物なので、責任をもって自分たちの代わりに飼ってくれる方を見つけることが必要です。

  3. (3)ペットを捨てると罰せられる可能性

    どうしても里親が見つからないからと言って、ペットを棄てる(遺棄する)ことは動物愛護法で禁止されています。もし、ペットを捨てた場合は、100万円以下の罰金が科せられる可能性がありますので注意しましょう。

  4. (4)保健所に相談しても引き取ってもらえないことがある

    ペットの引き取り手がどうしても見つからない場合は、地域の動物愛護センターに相談して引き取ってもらうこともできますが、最終手段として保健所に相談する方法もあります(犬猫のみ)。

    しかし、保健所に相談すると殺処分されてしまう可能性が高いので、相談する前に十分に検討した方がよいでしょう。また、飼育がどうしても難しいと認められない場合や、里親探しをしている様子が見受けられない場合は、保健所側に引き取ってもらえないこともあります。

5、まとめ

ペットを飼っている夫婦にとって、ペットはかけがえのない人生のパートナーであるという方も多いのではないでしょうか。そんな人生をともに歩んできたペットと、離婚を機に離ればなれになってしまうことに耐えられず、離婚時には夫婦でペットの取り合いになることも少なくありません。

離婚時にペットをどちらが引き取るかについてもめている場合は、ベリーベスト法律事務所 町田オフィスにご相談ください。当事務所の弁護士が、ご夫婦にとって、またペットにとって最も幸せになる方法を提案いたします。離婚に関する法律相談は、初回無料です。お気軽に当事務所までご来所の上、ご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています