不貞行為の慰謝料請求に時効はある? 起算点や中断する方法を紹介

2023年08月15日
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不貞行為の慰謝料請求に時効はある? 起算点や中断する方法を紹介

配偶者の不貞行為が発覚した場合には、配偶者や配偶者の不倫相手に対して、不倫慰謝料を請求することができます。

ただし、不倫相手の特定や不倫の証拠収集などの準備には時間がかかるため、実際に慰謝料請求するまでに数年の期間を要することもあります。そのような場合に気を付けなければならないのが慰謝料請求の「時効」という問題です。

本コラムでは、不貞行為の慰謝料請求の時効について、ベリーベスト法律事務所 町田オフィスの弁護士が解説します。

1、不貞行為とは?

まず、不貞行為に関する基本事項を説明します。

  1. (1)不貞行為の定義

    不貞行為とは、婚姻している人が配偶者以外の異性と肉体関係を持つことをいいます

    一般的には「不倫」と呼ばれているものですが、法律的には「不貞行為」と表現されます。また、不貞行為は、とはあくまでも性的な関係を持つことであるため、配偶者以外の異性とデートしたり、キスしたりすることは不貞行為にはあたりません。

  2. (2)不貞行為の慰謝料請求の相手方

    不貞行為があった場合には、婚姻共同生活の平和の維持という権利または法的保護に値する利益を侵害することになります。
    そのため、権利または利益を侵害された配偶者は、不倫慰謝料を請求することができます。

    不貞行為は、不倫をした配偶者と不倫相手の共同の行為によって行われるものであるため、不倫慰謝料は、不倫をした配偶者と不倫相手の双方に請求することができます。
    その際には、双方に全額の慰謝料を請求することができますが、慰謝料の二重取りができるわけではありません。
    どちらか一方から満額の慰謝料の支払いを受けた場合には、他方から慰謝料の支払いを受けることはできない点に注意してください。

    なお、後述するように不貞行為の慰謝料請求には時効があるため、時効の期間内に慰謝料を請求する必要があります

2、不貞行為の慰謝料請求に時効はあるの?

以下では、不貞行為の慰謝料を請求できる時効について解説します。

  1. (1)不貞行為の慰謝料請求の消滅時効は3年

    消滅時効とは、一定期間の経過により権利が消滅してしまう制度のことをいいます。
    不貞行為の慰謝料請求権についても消滅時効があり、不貞行為および不倫相手を知ったときから3年で時効になります

    不貞行為の時効期間は、不貞行為および不倫相手を知ったときから開始します。
    不倫相手が誰で、どこに住んでいるのかわからない場合には、不倫相手に対する時効期間は開始しません。
    ただし、不倫をした配偶者との関係では、名前も住所も当然把握していますので、不倫相手に慰謝料を請求する時効期間が開始していない状態でも、不倫をした配偶者に慰謝料を請求する時効期間は進行していきます。

    なお、不倫をした配偶者と不倫が原因で離婚をする場合には、不倫慰謝料という形ではなく離婚慰謝料という形で慰謝料の請求をすることもあります。
    この場合には、離婚をしたときから3年が時効期間となりますので、不貞行為を知ってから3年以上経過していたとしても、慰謝料を請求することができます

  2. (2)不貞行為の慰謝料請求には20年の除斥期間がある

    除斥期間とは、消滅時効と同様に、一定の期間の経過により権利が消滅してしまう制度です。消滅時効は、後述するように時効期間の進行をストップさせたりリセットしたりすることができますが、除斥期間にはそのような制度はなく、期間経過により当然に権利が消滅してしまうという違いがあります。

    不貞行為の慰謝料請求権には、消滅時効だけでなく除斥期間もあり、不貞行為があったときから20年を経過すると不貞行為の慰謝料請求権が消滅してしまいます
    また、除斥期間は不貞行為があったことを知らなかったとしても期間が進行する点に注意してください。

3、不貞行為の時効を止める方法とは?

以下では、不貞行為の消滅時効の期間の進行を止めたり、リセットさせたりする方法について解説します。

  1. (1)内容証明郵便を送る

    不倫慰謝料請求をすることは、法律上「催告」にあたりますので、催告のときから6か月間は時効の完成を猶予することができます
    催告は口頭で行うとも可能ですが、「催告をした」という証拠を残すために、必ず内容証明郵便による方法で行いましょう。

    なお、催告による時効の完成猶予は一度しか使うことができませんので、催告により時効の完成を猶予している間に、他の手段を検討する必要があります。

  2. (2)債務を承認させる

    不倫慰謝料の支払い義務がある相手に対して、債務があることを承認させることができれば、時効期間はリセットされて、最初から新たに時効期間が進行することになります

    債務の承認の方法としては、慰謝料の支払い義務を認める内容の誓約書や示談書にサインしてもらうことが一般的な方法です。

  3. (3)裁判で請求する

    裁判所に慰謝料の支払いを求める訴えを提起することにより、訴訟手続き中は、時効の完成を猶予することができます。
    つまり、訴訟手続き中に消滅時効期間が経過してしまったとしても、慰謝料請求権が消滅することはないのです。

    また、裁判の結果として判決が言い渡されることも時効の更新事由にあたり、判決の時点で時効期間はリセットされます
    そして、その後の時効期間は10年となります。

  4. (4)仮差押え

    仮差押えとは、慰謝料請求権などの金銭債権を確実に回収するため、相手の預貯金口座や不動産などの処分を禁止する手続きです。

    訴訟を提起したとしても裁判で結論が出るまでには時間がかかるため、その間に財産を処分されてしまうおそれがあります。
    仮差押えは、そのような財産処分を防ぐ目的で、訴訟提起前または訴訟中に利用されます。
    仮差押えをすることにより、仮差押えが終了したときから6か月が経過するまで時効の完成を猶予することができます

  5. (5)差押え

    差押えとは、確定判決などの債務名義に基づいて、相手の預貯金や不動産などの処分を禁止する手続きです。
    仮差押えは債権保全のために行われる手続きであるのに対して、差押えは債権回収のために行われる手続きであるという違いがあります。

    差押えをするために強制執行の申立てにより時効の完成が猶予されて、差押えの手続きが終了したときに時効期間はリセットされます

4、離婚問題は弁護士へ相談を

離婚に関する問題は、弁護士に相談することをおすすめします。

  1. (1)時効が迫っていても時効の完成猶予や更新により時効の成立を阻止できる

    配偶者の不倫を知ったとしても、離婚するかどうかをすぐに判断できず、時間が経ってしまうこともあります。
    しかし不倫慰謝料の請求には3年という時効期間があるため、慰謝料請求をお考えの方は、3年以内に方針を決めて動き出す必要があります。

    「悩んでいる間に時効の完成が迫ってしまった」という場合にも、時効完成前であれば弁護士に相談することで、時効の完成猶予や更新の手続きを行い、慰謝料請求権の消滅を防ぐことができます

  2. (2)離婚の交渉や慰謝料請求を任せることができる

    離婚や慰謝料請求をする際には、まずは当事者同士の話し合いで解決を目指すのが基本となります。
    しかし、配偶者が不倫している場合には、怒りや嫌悪感から感情的になってしまい、冷静に話し合うことができないという方も少なくありません。

    弁護士であれば、本人に代わって相手との交渉を進めることができます
    不倫をした配偶者や不倫相手と顔を合わせて話し合う必要がなくなるだけでも、精神的負担は大幅に軽減されるでしょう。

  3. (3)適切な条件で離婚できる可能性が高くなる

    離婚する際には、親権、養育費、慰謝料、財産分与などの条件を決める必要があります。
    これらの条件については、法的知識や経験がなければ適切な内容を決めることが難しいため、弁護士に相談することをおすすめします。

    不利な条件で離婚に応じてしまうと、離婚後の経済的状況が苦しくなるおそれもあります。少しでも有利な条件で離婚するためにも、早い段階から弁護士に相談してサポートを受けましょう

5、まとめ

配偶者の不倫が発覚した場合には、不倫をした配偶者および不倫相手に対して、慰謝料を請求することができます。
ただし、不貞行為を理由とする慰謝料請求権には、時効がありますので、慰謝を請求する場合には早めに行動する必要があります。
時効期間の計算や時効の更新・完成猶予の手続きをとるためには専門的な知識が必要になるため、弁護士に相談して対応を行いましょう。

配偶者に不倫されてしまい離婚や慰謝料の請求を検討されている方は、まずはベリーベスト法律事務所までご連絡ください

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています