未払いの残業代はどこに相談すればいい? 相談先や請求する方法を知りたい
- 残業代請求
- 残業代
- 未払い
- 相談
東京都町田市の運送会社のドライバーが月100時間以上の残業が続き、うつ病になった上解雇された件で、八王子労働基準監督署が労災認定したことがわかりました。労災に認定されたことで、解雇も違法となることになります。
このように、違法な長時間残業が度々話題になりますが、さらに問題なのは多くの会社が残業代を支払わない残業代未払い問題です。
「これだけ働いたのに残業代がもらえない。給与明細も残業手当はゼロ。どうなっているかを給与担当者に聞いたほうがいいのか、上司に聞いたほうがいいのか……」と迷っている方も少なくありません。
そこで、未払いの残業代があった場合の相談先や、未払いの残業代を請求する方法などについて町田オフィスの弁護士が解説いたします。
1、未払いの残業代はどこに相談すべき?
「法定労働時間(1日8時間、1週間に40時間)」を超えて残業した場合は、企業側は残業代を支払わなければなりません。残業をしているのに残業代が支払われていない場合は、しかるべき部署や機関等に相談する必要があります。
●労働基準監督署
厚生労働省の管轄である労働基準監督署は、企業が労働基準法などを守っているかどうかチェックする役割を持つ機関です。労働基準法などの労働関係の法令において、警察のような捜査権や逮捕権を有しています。
労働基準監督署は各都道府県に所在していて、電話またはメールで相談することができますが、明らかな法律違反がないと捜査を行えないため、残業代が未払いであるという証拠は自分で集めなければなりません。また、支払いを強制する力はなく指導や是正勧告をするだけなので、会社側が無視をすれば残業代が支払われないケースも少なくありません。
●厚生労働省 総合労働相談コーナー
厚生労働省が設置している労働関連の総合相談窓口で、各都道府県にある労働基準監督署や労働局と連携しており、相談者が申請をすれば、労働局長による当事者への助言や指導、紛争調整委員会による和解あっせんへと移行していくことも可能です。
●社会保険労務士
労働問題・年金問題についての専門家である社会保険労務士も、労働問題について相談することができます。しかし交渉での請求に応じず訴訟に発展した場合は、社会保険労務士は被害者の代理人になることはできないので、弁護士に依頼する必要があります。
●残業請求の経験が豊富な弁護士
弁護士であれば、各種書類の用意や手続き、企業との交渉、企業が示談に合意しない場合は被害者の代理人として裁判を起こすなど、問題解決のために必要なアクションをまとめて請け負うことができます。すでに企業との交渉が決裂してしまった場合は特に、弁護士に依頼することをおすすめします。
残念ながら、従業員が未払い残業代の請求をしたとしても、すぐに応じる企業はほとんどありません。確実に残業代を支払ってもらいたいと考える方も弁護士に依頼するとよいでしょう。訴訟を視野に入れた交渉ができるため、早期に残業代が支払われる可能性もあります。
2、残業代が請求できるケースについて
次に残業代が発生する条件や請求できるケースについて解説いたします。
-
(1)残業代が発生する条件
残業代は会社が定めた労働時間や法定労働時間を超過して労働を行った場合に発生します。
●所定時間を超えて労働したとき
●「法定労働時間(1日の労働時間が8時間・1週間で40時間)」以上の労働をしたとき
会社側が定めている就業規則や雇用契約で、「所定労働時間」が定められている場合、それを超えた分の残業代が請求可能です。ただし、法定労働時間内であれば、通常の賃金と同額の残業代が支払われます。
例えば、法定労働時間は1日8時間で、会社で定めた所定労働時間が7時間の場合、8時間働いたら1時間残業したことになりますが、法定労働時間を超えていません。したがって、通常の賃金と同じ金額の残業代が支払われます。
それに対して、法定労働時間である8時間を超えて9時間働いた場合は、1時間分は割増賃金を、1時間分は通常の賃金を残業代として受け取ることができるのです。
所定労働時間は、法定労働時間である「1日8時間、週に40時間」を超えてはならないので、所定労働時間が法定労働時間を超えている場合は、法定労働時間を超えた分から残業代を請求できます。
また、深夜に働いた場合、休日に働いた場合も通常の賃金にプラスした割増賃金を支払わなければならないと定められています。 -
(2)こんなときに残業代が請求できる
残業代が請求できるケースは「所定労働時間」や「法定労働時間」を超えて働いた場合です。「管理職だから」と残業代が支払われないケースでも、労働基準法が残業代の支払いを不要としている「管理監督者」に該当しなければ、残業代は請求できます。
また、みなし残業代制度を採用している場合も、基本給に含まれる残業時間を超えた場合は残業代の請求が可能です。就業規則において基本給に含まれる残業時間が明記されていなければ、みなし残業代制度は成立しない可能性が高く、全額残業代の請求が可能です。
サラリーマンとして働いている場合、所定労働時間や法定労働時間を超えて残業をしている場合は、残業代を受け取れる可能性が高いので、就業規則等を確認しておきましょう。
3、残業代請求をするならまずは証拠を
残業代は過去2年までさかのぼって請求することができます。ただ、請求するためには残業時間を証明する証拠、残業代が支払われていない証拠等が必要になるので、まずは証拠を集めましょう。
-
(1)どういったものが証拠になるのか
・残業時間を証明する証拠
未払い残業代を請求するために重要となるのが「残業時間」を証明する証拠です。原則としてタイムカードやICカードでの出退勤記録があれば、残業時間を証明できる強い証拠となります。
タイムカード等がなくても、業務日誌や日報、パソコンのオンオフのログなどで業務時間を証明することも可能です。
それらの証拠が見つからない場合は、友人や家族などに送信した「帰宅予告メール」、SNSなどにアップロードした「仕事が終わった」投稿なども残業時間の証拠となりえるでしょう。
・給与明細
残業代が支払われていないことを証明するために、給与明細も用意しておきましょう。給与明細があれば、残業代が支払われていないことは明確です。 -
(2)証拠がない場合はどうする?
残業代の証拠が一切見つからないという場合は、残念ながら残業代の請求はできません。しかし、働いていたのであれば何かしらの痕跡は残っているはずです。
タイムカード等で勤怠管理を行っていたのに、会社が見せてくれない場合は裁判所に証拠保全の申立てを行い、確保することも可能です。その場合は、弁護士に依頼して早急に証拠を確保しましょう。
会社に出退勤記録をつける習慣がなかったとしても、取引先とのメールやあなたの日記、手帳へのメモ、交通系ICカードの改札通過履歴などで、残業時間を推定することは可能です。
どうしても証拠が見つからない場合は、残業代の請求実績が豊富な弁護士に相談してみましょう。あなたが思いもよらないアドバイスをしてくれて、適切な証拠が見つかる可能性もあります。
4、どれくらい残業代がもらえる? 計算方法について
残業代を請求する場合は、会社にきちんと金額を提示できるよう、事前にしっかりと自分で計算しておきましょう。
法定外労働時間の残業代は以下の計算式で求められます。
法定外労働時間 × 基礎賃金(1時間あたり) × 割増率
時給者の場合は、そのまま基礎賃金でいいのですが、月給者の場合は、会社規則で定められている、月の所定労働時間あるいは所定日数、さらには所定時間などから、時給を求めます。基礎賃金は基本給と資格手当、役職手当だけです。家族手当や住宅手当、交通費などは含まずに計算します。
割増率は、通常は1.25ですが、休日出勤の場合は時給計算で割増率は1.35になります。また、通常勤務で22時以降の深夜に残業がおよぶと翌5時までは、平日で1.5、休日出勤では1.6となります。
計算が難しそうだなと感じた方はこちらのチェッカーで概算を確認するとよいでしょう。
たったの6ステップであなたが受け取ることができる残業代がわかります。
5、まとめ
残業代請求は、個人で行うこともできますが、残業代を支払わない会社が労働者の請求に応じるケースは多くありません。
また、証拠不足で残業代請求を認めてもらえないケースも少なくありませんので、強い証拠を集めるため、確実に残業代を請求するために、弁護士に相談することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所 町田オフィスでは、あなたの状況に最適なアドバイスをし、残業代請求が成功するよう親身になってサポートいたします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています