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保全命令とは? 使われるケースや条件、手続の流れを弁護士が解説

2020年08月24日
  • その他
  • 保全命令
保全命令とは? 使われるケースや条件、手続の流れを弁護士が解説

東京商工リサーチによると、令和1年の全国の負債総額1000万円以上の企業倒産件数は8383件で、11年ぶりに前年を上回りました。
そのうち町田市を含む東京都は1580件にもなります。

企業が倒産すると、債権が回収できなくなってしまうおそれがあります。
そのため経営が傾いているとわかった場合、債権者は早めに債権の回収をすすめることを検討するべきです。

ですが、裁判を起こして勝訴したとしても、事業者がその前に資産を売却したり隠したりしてしまっていると、回収できなくなることがあります。
それを防ぐためには、裁判と一緒に「保全命令」を申し立てておくことが大事です。

そこで今回は、保全命令の種類や利用方法などを、弁護士が詳しく解説します。

1、保全命令とは?

「保全命令」または「仮差押え」「仮処分」は、難しい手続というイメージを持つ方も多いでしょう。ただ裁判を行う際には知っておくべき制度ですので、その仕組みについてまずは簡単にご説明します。

  1. (1)保全命令とは

    保全命令とは「民事保全命令」の略で、裁判が終了するまでの間、権利が実現できるようにするために裁判所が出す命令です。

    通常、裁判で判決が出て強制執行などが行われるまでに、少なくとも数か月はかかります。

    その間に争いとなっているものが売却されてしまったり、状態が変わったりして、勝訴したとしても、原告が求めていたことが実現しなくなってしまうおそれがあります。
    そこで、裁判所が保全命令を出すことで、権利を守るのです。

    処分される前に命令を出してもらうために、一般的には裁判を起こす前または同時に申し立てます。

    保全命令には次の2種類があります。

    • 仮差押え
    • 仮処分

    それぞれ詳しくご説明します。

  2. (2)仮差押えとは

    仮差押えとは、債務者が財産を売却するなどして将来的に強制執行ができなくなるのを防ぐために、裁判所が暫定的に財産を差し押さえて処分できないようにする手続です(民事保全法第20条)。

    金銭債権の保全を目的とし、不動産、動産、債権等が仮差押えの対象となります。

    たとえば、債権回収のために裁判を起こしたとしても、判決までに債務者が預金を引き出して隠してしまったり、不動産を第三者に売却・移転登記してしまったりするかもしれません。
    そうなると、勝訴後に強制執行などをしようとしても債権を回収できなくなってしまいます。

    ですが仮差押えを認めてもらえば、債務者は原則として仮差押えされた財産を処分できません。
    もし売却などされてしまったとしても、売却にかかわりなく強制執行により債権を回収することが可能です。

  3. (3)仮処分とは

    仮処分は金銭債権以外の保全を目的としています。次の2種類があります。

    • 係争物に関する仮処分
    • 仮の地位を定める仮処分

    「係争物に関する仮処分」とは、争いとなっている物が処分されてしまうなどのおそれがある場合に、それを防止するための手続です(民事保全法第23条)。

    係争物に関する仮処分にはさらに「処分禁止の仮処分」と「占有移転禁止の仮処分」があります。

    処分禁止の仮処分を受ければ、たとえば土地の所有権移転登記を求めている場合、登記を現状のままとすることができ、第三者に売却・移転登記されるのを防げます。

    占有移転禁止の仮処分を受ければ、たとえば賃貸の部屋の明渡しを求めている場合、そこから更に第三者へ部屋が引き渡されてしまうことを防ぐことができ、第三者に対して裁判をせずに済みます。

    「仮の地位を定める仮処分」とは、争いがある権利関係について暫定的な処分を命ずることにより申立人が直面する困難を回避するための手続です。

    たとえば、解雇された従業員が解雇無効を求めて訴訟を起こした場合、地位が確定するまで生活費に困ることもあるでしょう。

    そこで「賃金仮払いの仮処分」を受けることで、暫定的に給料を受け取れるようになります。

2、保全命令申立ての条件とは?

保全命令は誰でも、どんなケースでも利用できるというわけではありません。次の条件を満たしている必要があります。

  1. (1)申立ての二つの要件

    民事保全法第13条は、保全を申し立てる要件として次の2点を規定しています。

    • 保全すべき権利・権利関係がある(被保全権利の存在)
    • 保全の必要性がある

    被保全権利の存在とは、貸金請求権や慰謝料請求権など、保全が必要な権利を有していることです。

    保全の必要性とは、本案判決を待たずに早急に保全しなければいけない理由のことです。
    たとえば工事禁止の仮処分を求めている場合、工事を止めなければ家が壊されたり土地に新しい建物が建てられたりする可能性があるため、判決を待つ時間的余裕はありません。

    申立ての際は証拠を添付して、この2つの条件を満たしていることを「疎明」しなければいけません。
    この疎明とは、訴訟での「証明」のように確信の程度に至る必要はなく、裁判官に「一応確からしい」と思ってもらえる程度で構いません。

  2. (2)担保が必要

    保全命令は、通常の裁判とは違って短い期間に少ない証拠で発令の可否を判断します。
    そのため、発令されたとしてもその後の本案訴訟で敗訴する可能性があります。

    その場合、仮差押えや仮処分によって権利を制限されたことによる相手方(債務者)の損害・不利益を回復しないといけません。

    そういったケースに備えて、通常は保全命令の条件として、相手方の損害を穴埋めする担保の提供が求められます。
    担保の金額は、裁判所の裁量によって決まり、被保全権利の種類や保全を求める権利の種類、保全命令により債務者が受ける損害の大きさなどに応じて異なります。

    ただし裁判所の判断によっては、担保金ゼロというケースもあります。
    担保は本案の訴訟で勝訴すれば返還されます。

3、保全命令の申立手続の流れ

保全命令申立ての手続は、次のような流れで進めていきます。通常の裁判と比べて短期間で結果がでます。

  1. (1)保全命令の申立て

    まずは裁判所に仮差押えまたは仮処分を申し立てます。

    申立書に申立ての趣旨、保全すべき権利の存在、保全の必要性を記載し、証拠を添付して裁判所に提出します。

    手数料は1件につき2000円で、収入印紙で支払います。
    郵送のための切手も必要です。

  2. (2)裁判所による審理

    裁判所が書類などを調べ、保全命令を出すべきか検討します。

    申立書類や証拠のほか、申立人を呼んで直接話を聞くこともあります。
    「仮の地位を定める仮処分」については、相手方の審尋も行います。

  3. (3)担保金の支払い

    裁判所は保全命令を出すべきと判断した場合には、発令の前に申立人に担保の支払いを求めます。
    担保には決まった金額がなく、裁判所の裁量によって決まります。

    担保が発令の条件となっている場合、支払えなければ発令はされません。
    ただし担保ゼロや、担保が発令ではなく執行の条件となるケースもあります。

  4. (4)保全命令の発令、執行

    担保の供託をもって、仮差押えや仮処分が発令されます。
    発令を受けて債務者の財産の仮差押えなどが実行されます。

    ただし、あくまで仮の対応であるため、本案の勝訴判決を受けて初めて正式に強制執行などが可能となります。

4、保全命令を弁護士に依頼するメリット

仮差押えや仮処分の申立ては個人で行うことも可能ですが、弁護士に依頼されることをおすすめいたします。弁護士に依頼するメリットについてご紹介します。

  1. (1)スピーディーな対応ができる

    保全命令の申立ては、スピーディーな対応が命です。

    たとえば債権回収の場合、債務者が財産を隠したり売却したりしてしまう前に決定を出してもらう必要があります。
    また、申立てができたとしても、途中で債務者に気付かれればすぐに財産が処分されてしまう恐れがあります。
    そのため、できるだけ早く、かつ債務者にバレないように申立てを進めなければいけません。

    弁護士に依頼すれば、手続を熟知しているため、迅速に書類を作成したり証拠を集めたりして、スピーディーな対応が可能です。

  2. (2)保全の必要性を的確に訴えることができる

    申立てが認められるかどうかは、申立書にかかっているといっても過言ではありません。

    裁判所は審理の際に当事者から話を聞く場合もありますが、書類だけで判断することも珍しくありません。
    そのため、書類だけでも命令を出してもらえるように、申立書に説得力のある「保全の必要性」を書き、それを裏付ける証拠を提出する必要があります。

    ほとんどの方は申立書を書いたことがなく、どのようなことを書けばよいのかわからないでしょう。
    弁護士であれば、適切な申立書を作成することが可能です。

  3. (3)裁判と合わせて対応してもらえる

    保全命令が出たとしても、それはあくまで「仮の対応」です。
    本案の訴訟で勝訴しなければ、強制執行などにより正式に権利を行使することはできません。

    そのため、申立てと同時またはその前後に、必ず本案の訴訟を起こさなければいけません。

    本案の訴訟で主張を認めてもらい勝訴判決を得ることは、保全命令を出してもらうことより難しいため弁護士のサポートが必要となります。

    保全命令と本案の訴訟を同じ弁護士に依頼すれば、情報共有が一度で済み、スムーズに手続を進められます。
    書類の作成なども任せることができるため、ご自分の手続面での負担やストレスを減らすことにもつながります。

5、まとめ

本案の訴訟も保全命令申立ても、個人で行うことは容易ではありません。保全命令の手続を適切に進めたい方や、交渉でお困りの方は、どうぞベリーベスト法律事務所 町田オフィスへご相談ください。
弁護士がお客さまのご希望に沿って、できるだけ早く手続を進めます。時間の経過とともに状況が悪化するおそれもありますので、迷っている方はまずはご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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