お試しのはずが、通販の定期購入トラブルに。返品や対処方法について
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新型コロナウイルス感染拡大による政府からの外出自粛要請の影響で、「うちで過ごす時間が増えた」「ネット通販をいつもより利用するようになった」という方も少なくないのではないでしょうか。しかし、その一方で、「お試しで申し込んだら定期購入にされていて何万円もの金額の支払いを要求された」といったような、通販にまつわるトラブルに遭う方も少なくありません。
定期購入に関するトラブルはどのように対処すればよいのでしょうか。町田オフィスの弁護士が解説します。
1、お試し購入がいつのまにか定期購入に?
通信販売の健康食品や化粧品などの定期購入に関するトラブルが後をたちません。通信販売での健康食品等の「定期購入」に関する相談件数は、平成26年には1925件でしたが、平成30年度には23002件と10倍以上に増加しています。また、令和元年11月30日時点での相談件数は29177件と前年度をすでに6000件も上回っています。
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(1)よくあるトラブル事例
健康食品等の定期購入について、国民生活センターに寄せられる相談には以下のような事例があります。
①「お試し」のつもりだったのに定期購入になっていた
「お試し価格500円」という化粧品の広告を見つけてお試しのつもりで購入したが、後日2回目の商品とともに通常価格5か月分の金額の請求書が届いた。
②「解約できる」と思ったら通常価格での購入が条件だった
「〇日間解約保証」と書かれた商品を購入したが、効果がなかったので期日以内に解約の連絡をしたところ、通常価格を支払うよう請求された。
③頼んでもないのに2回目にまとめて商品が送られてきた
お試しのつもりで一度サプリメントを購入したが、その後事業者に何も連絡をしなかったので契約は終わったものと思っていた。しかし、1か月後に2回目の発送として数ヶ月分の商品が発送されてきた。
④カウントダウン表示であせって購入すると定期購入が条件だった
SNSで「特別価格終了まであと〇時間〇分」というお試しのダイエットサプリメントの広告を見て、あせって購入したところ、半年以上の定期購入が条件となっていた。
⑤解約したいのに電話がつながらない
初回購入価格1000円で化粧品を購入した。これ以上はいらないと思い、同封されていた説明書に「解約する場合は次回の発送日の10日前までに連絡を」と書かれていたので、期日まで電話をかけ続けたがつながらなかった。
以上のような事例が多数報告されていることから、消費者庁や国民生活センターでは注意喚起を行っています。 -
(2)トラブルが起こる理由
トラブルが起こるのは、主に以下の5つの理由があるためだと考えられています。
①定期購入となることがわかりづらい
上記のようなトラブルが起こるのは、定期購入が条件となる旨の表示がわかりづらいことが原因のひとつとしてあげられます。「今すぐ購入」などと書かれたアイコンの下に小さく「定期購入が条件」の表示があったり、何度もスクロールをしなければその表示にたどりつかない仕様となっていたりするので、契約内容を把握しづらくなっているのです。
②説明が不十分なSNS広告や動画広告からの購入が多い
インターネットを使っていてたまたま目に入ったSNS広告や動画広告から購入に至るケースも少なくありません。広告には低価格や効果の高さが強調されており、定期購入が条件となっていることを消費者が見落としがちなこともトラブルの原因のひとつです。
③返品特約や解約条件が認識しづらい
広告が返品や解約のできる条件が認識しづらい仕様になっていることもトラブルのもととなっています。「次回以降は不要」と思って事業者に連絡をしても、最低購入回数が設けられていたり、解約には通常料金を支払うことが必要と主張され返品も解約もできないケースがあります。
④事業者と連絡がつかない
定期購入を解約しようと、事業者に電話をしてもなかなかつながらないことも問題とされています。これは、事業者側でコールセンターなどの顧客窓口の人員体制が整っていない上に、問い合わせ窓口が電話のみでメールやファックスでの問い合わせを受け付けていないことが多いことが主な原因です。
⑤想定以上の金額を支払うことになる
お試し価格で購入する場合、ほとんどの方は「お試し価格のみを支払えばよい」と思うでしょう。しかし、2回目以降の商品が発送されてきて、お試し価格以上の金額を支払うことになるケースも少なくありません。その金額は数千円から数万円程度で決して支払えない金額ではないため、泣き寝入りしてしまう方が多いのが現状です。
2、返品は可能?クーリング・オフは使えるの?
訪問販売やキャッチセールスなどでは、悪質な事業者に対してはクーリング・オフ制度を利用して解約・返品することができました。しかし、通販の場合はクーリング・オフや返品はできるのでしょうか。
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(1)通信販売にクーリング・オフ制度は使えない
原則として、通信販売にはクーリング・オフ制度は使えません。訪問販売やキャッチセールスなどは、不意打ちとなり冷静な判断ができないうちに購入させられてしまうためクーリング・オフが使えるのです。一方、通販の場合は、自分から通販サイトなどにアクセスして品定めをした上で商品やサービスを購入しているため、クーリング・オフが適用できないのです。
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(2)返品は返品特約に従う
一度通販で購入した商品が必要なくなったからといって、だまって返品しても解約にはなりません。返品したい場合は、あらかじめ広告に表示されている返品特約に従うことになります。返品特約には、たいていの場合「商品到着後〇日以内」のように返品期限が決まっているので、期限内に送り返すようにしましょう。ただし、広告に返品特約の表示がない場合は、商品到着後8日以内であれば、送料は自己負担となりますが返品は可能です。
3、契約者が未成年者や高齢者のときは返品やクーリング・オフできる?
通販ではクーリング・オフが原則として利用できず、返品ができるかどうかも返品特約しだいとなります。しかし、契約者が未成年者や高齢者の場合はどうなのでしょうか。未成年者はまだ社会経験が浅く、判断能力も未熟であるとされています。高齢者も、認知症患者などは判断能力が低下して、自分が重大な契約を結んでいてもわからないことがあります。
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(1)未成年の場合は購入を取り消せる可能性がある
未成年者の場合は、未成年者自身や法定代理人が購入を取り消すことができる可能性があります。購入を取り消すと、はじめから契約がなかったものになるため、支払った代金を取り戻すことができます。届いた商品・サービスは、すでに使用済みであっても現に利益を受ける範囲で返還すればよいとされています。
取り消しできる条件は以下のとおりです。- 契約時の年齢が20歳未満であること
- 購入者に婚姻の経験がないこと
- 法定代理人が同意していないこと
- 法定代理人から、処分を許された財産(小遣い)の範囲内でないこと
- 法定代理人から許された営業に関する取引でないこと
- 未成年者が年齢や保護者から同意を得ていることを偽っていないこと
- 法定代理人の追認がないこと
- 取消権に時効が成立していないこと(購入者が成人して5年以内または契約から20年以内)
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(2)高齢者の場合は判断能力が低下していることが要件に
高齢者が契約を取り消せるのは、認知症などで判断能力が低下していることが条件となります。判断能力の低下している制限行為能力者であることが証明できれば、制限行為能力者が単独で行った法律行為は無効となります。
購入者が認知症である場合は、認知症であることを示す医師の診断書があれば購入を取り消すことができる可能性があります。また、購入者が被成年後見人である場合も、契約の無効を主張できる可能性があるでしょう。
4、定期購入トラブルへの5つの対処法
定期購入に関するトラブルに対処する方法は大きく分けて5つあります。トラブルに巻き込まれることのないよう、これらの対処法を覚えておきましょう。
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(1)支払総額や定期購入かどうかを確認する
サプリメントや化粧品の広告は、目を見張るような効果や低価格をうたっているものもありますが、いったんは冷静になって広告の内容をよく確認することが大切です。通販事業者に不利になる表示は、気が付きにくくなっていることも少なくありません。小さな字で「定期購入が条件」「2回目以降は通常価格」「最低〇か月継続」などと書かれていないか、目を皿にして慎重に確認しましょう。
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(2)解約・返品条件を確認する
また、万一解約や返品がしたくなったときのために、解約や返品の条件も確認することが必要です。事業者にとってみれば、解約や返品は避けたいものなので、これらの条件も目立たないところに書いてある可能性があります。広告をスマートフォンで見ている場合は、パソコンからもアクセスしてみて、解約や返品の条件がどのようになっているかを確認することが必要です。
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(3)事業者に連絡する際には記録を残す
解約や返品のために事業者に連絡をとる際には、のちに争いになった時のために記録を残しておきましょう。電話であればICレコーダーやスマートフォンの録音機能で録音するとよいでしょう。電話が混み合っていてなかなかつながらない場合も、電話をしようとしたことは通話履歴に残しておきます。メールやファックスであれば、相手に送る文章が手元に残るので、しばらく保管するようにしましょう。
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(4)消費生活センターに相談する
「お試し品を購入した事業者から、依頼してもいないのに商品が届いた」「代金を請求されたが支払いたくない」などお困りの場合は、お近くの消費生活センターに相談しましょう。自宅に近い消費生活センターがわからない場合は、消費者ホットライン「188(いやや)」に電話をすれば、最寄りの消費生活センターを案内してもらえます。
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(5)弁護士に相談する
消費生活センターに連絡するのも良いのですが、話を聞いてもらえるだけで終わってしまうこともあります。根本的に解決をするには、まず弁護士に相談してみることをおすすめします。
消費者トラブルに巻き込まれても、だれにも相談できず「泣き寝入りするしかない」と考える方も少なくありません。弁護士に相談すれば、弁護士が依頼者の代わりに通販事業者と交渉して、購入の取り消しや解約できる可能性が高くなります。
5、まとめ
コロナ禍でいわゆる「巣ごもり消費」が増える中、インターネット通販でのトラブルに巻き込まれてしまう方は少なくありません。
ベリーベスト法律事務所 町田オフィスでは、定期購入トラブルでお困りの方のご相談を受け付けております。通販でのトラブルは人には相談しにくいものです。相談内容や依頼内容の秘密は厳守いたしますので、おひとりで悩まずにお気軽にご相談ください。
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