離婚の財産分与で退職金は請求できる? 請求できる退職金の計算方法とは
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町田市の発表によると、平成31年1月の離婚件数は52件、結婚の件数は117件でした。婚姻届を提出した夫婦の半分弱の夫婦が離婚しています。平成30年は1年間に665組もの夫婦が離婚しました。
離婚の際は、慰謝料や養育費、財産分与などでお金のやりとりが発生しますが、忘れられがちなのが退職金の財産分与です。
退職金も全てではありませんが、財産分与の対象となる可能性があるので、離婚前にしっかりと確認しなければなりません。そこで、ベリーベスト法律事務所 町田オフィスの弁護士が、退職金の財産分与について、丁寧に解説いたします。
1、退職金は財産分与の対象になる?
そもそも財産分与とは、これまでの結婚生活の中で夫婦が互いに協力して気付いた財産を離婚時に分けることをいいます。
名義がどちらであっても、結婚して共同して築いた財産であれば対象になるのです。
ただし、結婚前から相手が所有していたものに関しては財産の対象外になります。
また、別居期間がある場合については、別居中に形成された財産に関しては夫婦で一緒に形成した財産とはいえないため、結婚してから別居するまでの財産が対象になります。
貯金や不動産、車、株券、年金、家財道具などさまざまなものが財産分与の対象になりますが、給与もその中に含まれています。
そして、退職金は給与の後払いとしての性質があるため、給与と同様に財産分与の対象になるのです。
ただし、退職金は結婚生活の間に共同で形成した財産である部分と、結婚前に夫が独自で労働した対価である部分も含まれるため、計算が複雑になります。また、財産分与の対象にできないケースも存在します。
2、退職金を財産分与の対象にできるケースと計算方法
退職金は財産分与の対象ではありますが、退職金が支払われるのは退職時です。
そのため、退職まで期間が長い場合や退職金の見込みがない場合には、退職金を財産分与の対象にできない可能性が高いでしょう。
それでは、退職金が財産分与の対象になるケースと、計算方法を見ていきましょう。
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(1)退職金がすでに支払われている場合
すでに退職金が支払われている場合には、基本的には財産分与の対象になります。
ただし、退職金がかなり前に支払われており、退職金相当額がすでになくなっている場合には対象となる財産が存在しないため、分与したくてもできないでしょう。
退職金がすでに支払われている場合の財産分与の計算方法は、婚姻期間や退職金支給にかかるまでの勤務年数によって変わります。
退職金がすでに支払われている場合の計算式はこちらです。
「退職金総額×婚姻期間÷勤続期間」
たとえば、勤務期間が20年間のうち、婚姻期間が10年間だった場合には退職金の半分が財産分与の対象になるのです。
ただし、途中で別居していた場合には、別居期間を差し引かなくてはいけません。
「退職金総額×(婚姻期間-別居期間)÷勤続期間」で計算するといいでしょう。 -
(2)退職金がまだ払われていない場合
退職金の支払いが、将来的にほぼ確実に見込まれている場合には財産分与の対象になると考えられます。
ただし、退職金がまだ支払われていない場合には、「会社の状況」「夫の勤務状況」「退職金が支払われるまでの期間」を考慮して、財産分与の対象になるかどうか判断されます。
退職までの期間が10年以上ある場合などには、途中退職や会社の経営不振などが想定されるため、確実に退職金が支払われるという保証がありません。
そのため、受け取る保証がない退職金の分割を現段階で決めることは、支払う側に不公平になるため財産分与には含まれないことが多いです。
退職金を支払われる期間が長いほど財産分与に退職金が含まれる可能性は低くなるでしょう。
また、もし支払われるとしても、婚姻期間に応じた割合になるので婚姻期間が短ければ低額になります。
退職金が財産分与として認められる場合の計算方法は、明確に算式が決まっているわけではありませんが、2つの例をご紹介します。
●現在退職したと仮定して計算する方法
こちらは、現在退職した場合に退職金がどのくらいになるのか計算する方法です。
現在退職して受け取る退職金相当額から、婚姻前の労働分を引いた金額が対象になります。就業規則や雇用契約などを確認して、現在退職した場合の退職金を試算しなければならないので、難しければ弁護士などの専門家に相談しましょう。
●定年時に受け取る退職金で計算
定年時に受け取る予定の退職金から婚姻前と別居後の労働分を引いた計算方法です。
この場合、中間利息を控除する必要があります。
中間利息とは、将来受け取るべきものを早く受け取るため、本来受け取るべきときまでに発生する利息のことです。
3、退職金の分割割合を決める方法
退職金が財産分与の対象となるかどうかがわかったら、次は、分割割合を決定しなければなりません。
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(1)夫婦の「寄与度」を考えつつ分割割合を決める
分割割合は夫婦の話し合いのもと自由に決めることができます。調停や裁判になった場合は原則として2分の1で分割されますが、話し合いの時点であれば、2分の1に固執する必要はありません。
話し合いで分割割合を合意できたら、公正証書を作成しましょう。公正証書を作成しておくと、裁判を起こさなくても、退職金の分割の約束を守ってもらえなかったときに、差し押さえなどの手続きが可能です。 -
(2)話し合いがまとまらなければ調停を申し立てよう
話し合いで合意できなければ、家庭裁判所での調停を検討しましょう。
調停では、調停委員が双方の話を聞きつつ進めます。調停はあくまで当事者による話し合いの場であり最終的な判断は当事者の責任ですが、第三者の客観的な判断を聞くことができます。また、相手と直接話し合う必要がないので、精神的な負担も軽減されるところもメリットです。調停が成立した場合、合意の内容は法的な効力を有する「調停調書」に記されます。 -
(3)調停でまとまらなければ裁判
調停でも合意できなかった場合、裁判を検討しましょう。
裁判では、あくまで当事者の意思が尊重される調停と違い、裁判官が最終的な判断を下します。
また裁判では、調停よりも証拠が重視されます。そのため、お互いの財産を細かく把握しておくことが重要です。裁判は通常、調停よりも時間や費用がかかるものですが、途中で和解を選ぶことで早期解決をすることもできます。
複雑な手続きが必要なケースが多いですし、裁判を起こすために訴状を書くという手続きひとつ取っても慣れないと相当な時間がかかってしまいますので、弁護士に対応を依頼しましょう。
4、まとめ
離婚時の婚姻年数や夫の退職までの年数、会社の経営状態や勤続年数、勤務態度によって、財産分与の中に退職金が認められるかどうかが変わります。また、計算方式もいくつかありますし、就業規則や雇用契約を読み込んで退職金を計算するのも非常に難しいものです。
財産分与については、離婚問題と複雑に絡み冷静に話し合うことができません。そのため、トラブルの大きな原因になりがちです。分与額の計算方法や、相手の説得が難しい場合にはベリーベスト法律事務所町田オフィスの弁護士にご相談ください。
離婚の財産分与問題の取り扱い実績が豊富な弁護士が、あなたの状況をきちんと把握した上で、最適な退職金の財産分与方法についてアドバイスします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています