妻のモラハラにはもう限界! モラハラを理由に離婚できる?
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モラハラは、「夫から妻に行われるもの」だけではありません。裁判所が公開している司法統計「平成29年度 婚姻関係事件数 申立ての動機別申立人別 全家庭裁判所」によると「精神的に虐待する」を動機とする申立て件数は、妻から12093件、夫からは3626件です。一方、申立ての総数は、妻からの申立てが47807件、夫からの申立てが17918件ですので、精神的虐待を理由とした申立ては妻からの申立ての約25%、夫からの申立ての約20%を占めています。
夫からの申立ても決して少なくありません。では、どのような行為がモラハラにあたるのか、さらにモラハラを理由に離婚できるのかについて町田オフィスの弁護士が解説します。
1、モラハラとは
モラハラとはモラルハラスメントの略であり、精神的な苦痛を与えるという意味合いが強く含まれます。具体的には、相手の人格を攻撃する発言、能力がないとなじる、価値観を否定する、経済的自由を与えない、人間関係を制限するといった行動が挙げられます。
一般的に、モラハラは夫から妻へ行われるケースが多数と考えられていました。しかしながら、冒頭でご紹介した通り、妻から夫へ行われるモラハラも決して少なくありません。
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(1)モラハラの特徴的な発言や態度
自分が我慢すればよい、自分が至らないからと考え、妻からモラハラを受けている自覚がない方も少なくありません。
例えば、次のような言葉を日常的に受けていないでしょうか。- 男のくせにできないの?
- あなたの両親はこんなことも教えてくれないの?
- そんなこと常識でしょ?
- 生きている意味あるの?
- そんなことも知らないの?
- あんたの稼ぎが少ないからでしょ
言葉には出さないものの、次のような態度を取るケースもあります。- 理由もなく日常的ににらみ付けられる
- 話しかけても無視される
- 料理や洗濯も夫の分はやらず、いないものとして扱う
- 夫の親族や友人に対して嫌な顔をする
- 子どもに悪口を吹き込む
お互いの価値観をすり合わせるための夫婦喧嘩であれば、もちろん問題ありません。しかし、人格否定を続けるようであれば、それはモラハラといえるかもしれません。
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(2)モラハラ妻の特徴
プライドが高く、相手に意見されることを好まず、自分が正しいと過信しているケースが多くみられます。
また、外に出ると人当たりがよく、良い妻であるかのようにふるまうケースも少なくないようです。そのため、周囲に相談しても夫が嘘をついているように捉えられてしまい、相談しにくく感じたり、事態を長期化させたりする原因ともなります。
2、モラハラへの対策
毎日のように罵倒されたり,無視されたりする状態が長期化するようであれば、家庭で安心した生活が送れないことから、心身の健康を損なってしまう可能性もあります。
何よりも、子どもがいるならば、家庭内に精神的な虐待があることは、子どもの生育環境として決して望ましくないことです。
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(1)まずは専門機関に相談しましょう
各自治体に設置された男女共同参画センターでは、人権問題を扱う窓口などが開設されています。都内であれば、東京都渋谷にある東京ウィメンズプラザにて、「男性のための悩み相談」を電話で受け付けています。
匿名かつ無料で相談できるため、まずは自分の状況を話すだけでも、何がモラハラなのか判断する助けになるはずです。行政の窓口の関わりでは十分な結果が得られない場合は、弁護士など有料のサービスを検討するとよいでしょう。
これらの相談歴は、裁判になった場合にも第三者に助けを求めたという主張であり、自分の思い込みだけではないとの根拠となりえます。積極的に利用し、自分の置かれている状況を客観視するようにしてみましょう。 -
(2)モラハラの証拠を集めましょう
離婚をするためには夫婦の合意が必要です。相手の合意がなくても離婚するためには、民法第770条第1項第5号にある法定離婚事由に該当している必要があります。
第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
妻が離婚を拒否する場合、夫は、上記の法定離婚事由に該当する出来事があったことを主張して、調停や裁判による離婚を目指すこととなります。その際には、モラハラがあったことを示す証拠の提出が求められます。
- 一 配偶者に不貞な行為があったとき。
- 二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
- 三 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
- 四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
- 五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
暴言を録音する、継続して日記を書く、メールやSNSの履歴を残すなどして、モラハラがあった事実を客観的に示す証拠を集めておきましょう。また、精神的に抑うつ状態になったり、不眠になったりした原因がモラハラであれば医師の診断書をもらっておきましょう。医師の診断書は強力な証拠となります。
裁判で認められる証拠とするには、合法的な手段で取得したものであることが前提です。プライバシーの侵害で逆に訴えらえることのないよう、証拠の取得方法については、事前に弁護士に相談することをおすすめします。
3、モラハラ妻と離婚をするときの手順・方法について
離婚する覚悟を決めたのであれば、まずは妻と離婚条件について話し合うことが必要です。財産分与の問題、子どもがいれば親権や養育費の問題があるため、条件の合意を取ることは非常に重要です。
離婚の方法には協議離婚、調停離婚、裁判離婚の3種類あります。
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(1)協議離婚
話し合いによって離婚をすることを協議離婚といいます。
話し合いで解決・合意ができれば何も問題はないのですが、そもそも話し合いができる相手ではないからこそ悩まれているケースが多いのではないでしょうか。この段階で、弁護士に依頼して、交渉は弁護士に任せて自分は仕事や育児に専念することも一案です。
妻も、弁護士相手であれば冷静に話し合いに応じる可能性があります。協議離婚がスムーズに成立すれば、いち早く離婚が実現するでしょう。ただし、協議離婚で決めたことは必ず離婚協議書にし、可能な限り公正証書にして保存しておくことをおすすめします。 -
(2)調停離婚
夫婦間で話し合い(協議離婚)がまとまらなかった場合は、家庭裁判所に調停の申立てをして、第三者である調停員に間に入ってもらって、話し合いをするという方法があります。
調停では、家庭裁判所の調停員に対して夫婦がそれぞれ事情を説明しながら、話し合いを進めていきます。個別に呼び出されるため、お互いが顔を合わせることはありません。調停員は双方の主張を受けて、離婚条件についての妥協点を提示します。ここで離婚が成立することを調停離婚といいます。なお、調停は月に1回程度しか行われないため、結論が出るまでに数ヶ月かかります。 -
(3)裁判離婚
調停でも合意ができない場合は、裁判による離婚となります。訴状を準備し、家庭裁判所に裁判を申し立てます。裁判を起こす前には、必ず一度は調停を行う必要があります。
裁判では、口頭弁論を重ね、裁判官による判決が下されます。また、裁判になれば判決が出るまでに1年から2年程度かかるケースがほとんどです。長期戦になる上、手続きにも時間や手間がかかり、知識が求められます。弁護士に依頼して進めてください。
4、弁護士に依頼するメリット
離婚交渉を弁護士に依頼するメリットは、大きく2つあります。不平等な条件での離婚を回避できる可能性があることと、相手と顔を合わせなくて済むということでしょう。
個人同士で話し合い協議離婚に至った場合は、交渉を早く終えたいがために、相手の行き過ぎた要求を受け入れてしまう可能性があります。
しかし、弁護士であれば、その知見により、適切な相場に応じた慰謝料や養育費を取り決めることができます。また、確実な証拠があり、モラハラが悪質だと認められれば、高額な慰謝料を受け取れる可能性もあります。
このようにあなたにとって不平等な条件にならないように冷静に交渉を進めることができるでしょう。
また、離婚したいと思うほどのモラハラ加害者との交渉は、それ自体が非常に大きな精神的ストレスであることは間違いないものです。弁護士を間に入れることで、自分を相手からの敵意や悪意から遠ざけることができます。
5、まとめ
男性のモラハラ被害はまだ認知度が低く、周囲に助けを求めづらいと考える方は少なくありません。しかしながら、モラハラをする妻と感情をぶつけあってもあなたが疲弊するだけです。
妻のモラハラにお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 町田オフィスへご相談ください。離婚問題に対応した経験豊富な弁護士が、適切な対応とアドバイスを行い、明るい未来へ踏み出すためのアクションをサポートします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています