年金分割はいつまでもらえる? 元配偶者の再婚・死亡ケースも解説
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年金は、老後を迎えた方にとって、重要なライフラインとなるため、実際に年金分割をしたらどうなるのか、いつまでもらえるのかを心配される方が多いようです。結論から申し上げますと、離婚時に行う年金分割は、過去に納付された部分を分割する手続きなので、年金そのものは受給資格さえあればその期間は受け取れるといえます。なお、日本年金機構が全国社会保険労務士会連合会に委託し運営されている「街角の年金相談センター 町田」では、年金の受け取りについての相談や手続きを行えます。すでに年金を受け取っている方などは、こちらに相談することをおすすめします。
本コラムでは、ベリーベスト法律事務所 町田オフィスの弁護士が、離婚時にはその存在を失念していたり、離婚後に年金分割を行おうと思っていたものの元配偶者が再婚したり、死亡してしまったというケースにおける年金分割の支給について解説します。
1、そもそも、年金分割とは?
年金分割制度は平成16年に導入された制度です。離婚後に、配偶者の年金保険料納付実績の一部を分割することで、もう片方の配偶者が年金を受け取ることができるというものです。分割できる年金額は結婚していた期間に応じて分割されるので、婚姻期間が短いと支給金額も少なくなりますし、婚姻期間が長いと支給金額も増える傾向にあります。
離婚したら自動的に分割されるのではなく、話し合いや裁判などで分割請求を行わなければなりません。請求を行わなければ、年金は分割されません。つまり、知らずに請求期限を過ぎてしまうと二度と請求するチャンスはなくなってしまいます。
ただし、この年金分割制度で分割できるのは「厚生年金」のみに限られます。また、配偶者が支払っていた年金保険料が自分よりも高額だったというケースのみ、分割可能となる点にも注意が必要です。
なお、自営業者などで国民年金にしか加入していない場合は、年金分割はできないので注意しましょう。厚生年金に上乗せする確定拠出年金や、国民年金の上乗せの国民年金基金も分割の対象外となるため、これらに年金分割制度は適応されません。
年金分割制度では、支給される年金それ自体が分割されるものではありません。分割できるのは、納付した実績ですから、単純に年金額を2で割ればよいというものではないということを覚えておきましょう。そのうえ、納付保険料や婚姻期間によって、分割される年金の額は千差万別なので、個別に計算しなければ、具体的な分割額ははっきりとはわかりません。
なお、年金分割によって増える年金支給額は、平均すると数千円から2、3万円と決して高額ではありません。したがって、年金分割があるから生活の心配はない、と決めつけず、年金分割以外にも自分自身の収入源を考えておきましょう。ご自身の年金分割について詳しく知りたい方は、年金事務所に相談することをおすすめします。
50歳以上の方や障害者年金を受け取っている方は、年金事務所に問い合わせることで、年金分割した場合の年金見込み額を教えてもらうことも可能です。その際は「情報提供請求書」に分割後の年金見込み額を知りたい旨を記載して提出しましょう。
一方が再婚した場合や死亡した場合にも年金は支給されるの?
離婚時に夫から妻に年金分割をしたあと、妻が別の男性と再婚した場合も、変わらず分割された年金は支給されます。逆に夫が再婚しても年金分割に影響はありません。同じように、離婚後、元夫が死亡しても元妻に年金は支給されます。
ただし、年金分割を受けた妻が死亡しても、すでに離婚している夫の年金へ、分割済みの年金納付分が戻ることはありません。
年金分割によって支給される年金は、月額では大きな金額にはならないことが多いですが、死亡するまでもらえるとなると、合計金額はまとまったものになります。年金分割は、離婚の際に認められた正当な権利なので、必ず請求手続きを行いましょう。
なお、分割した年金を確実に受け取るためには、離婚後速やかに弁護士に相談することをおすすめします。
3、2種類の年金分割制度とは
年金分割には以下の2種類があります。
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(1)合意分割制度
合意分割制度とは、話し合いや裁判などで年金分割の割合を決める分割方法です。
当事者同士が決定した割合が適用されます。
なお、離婚したときに下記条件に当てはまっている場合に、厚生年金記録を分割できるという制度です。- 婚姻期間中の厚生年金記録があること
- 当事者双方の合意または裁判によって按分割合を定めたこと
- 請求期限を徒過していないこと
婚姻期間中に厚生年金を納めており、分割する割合も合意済みで、請求期限を徒過していない場合に分割できるというわけです。合意分割ができるのは平成19年4月1日以降に離婚した方となっているのでご注意ください。
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(2)3号分割制度
3号分割制度は、年収が厚生年金の扶養ラインを越えていない3号被保険者である妻や夫に、厚生年金記録を2分の1ずつの割合で分割する制度です。先ほどの合意分割制度が、任意で割合を決められるのに対し、3号分割制度では、割合は2分の1と決められています。
3号分割制度を利用できるのは下記の条件に合致する方です。- 婚姻期間中に平成20年4月1日以降の第3号被保険者期間中の厚生年金記録があること
- 請求期限を徒過していないこと。
つまりは、婚姻期間中に、配偶者がしっかりと厚生年金保険料を支払っていれば、年金を分割できるということです。
4、年金分割の請求期限は2年
年金分割の請求には期限が定められています。3号分割制度を利用する人も、原則として離婚をした翌日から起算して2年以内が請求期限です。
合意分割の場合も離婚した翌日から2年と定められています。2年を過ぎると請求ができなくなってしまうので、離婚が成立したらなるべく早く年金分割を請求しましょう。また、年金分割は将来受け取る年金を分割するもので、過去に受け取り済みの年金を増減することはできないのでご注意ください。
合意分割で年金分割をする場合、まずは「年金分割のための情報通知書」という書類を取り寄せます。その内容を見ながら、夫と妻で按分割合を相談します。按分割合の上限は2分の1です。
双方が分割内容に合意した場合は公正証書等などの、合意内容を公的に証明できる書類を作成します。その後、年金事務所で、年金分割改定の請求を行わなければなりません。その際には、年金手帳、国民年金手帳または基礎年金番号通知書、戸籍謄本もしくは戸籍抄本が必要となるので用意しておきましょう。
夫と妻で話をしても合意できない場合は、家庭裁判所に年金分割の割合を定める調停等の申し立てを行うことになるでしょう。
5、年金の受取開始日はいつ?
年金分割を行った場合、それぞれの年金受給開始日に支給がスタートします。現在は、65歳に達することと、納付期間が25年を超えていることが支給スタートの条件です。
また、配偶者の扶養に入っていた妻や夫が60歳未満で離婚した場合、59歳11か月までは国民年金保険料を自分で支払わなければなりません。離婚前に自分で国民年金保険料を負担していなかった方は、59歳11か月までは負担が増えてしまうことになります。
6、まとめ
年金分割は、婚姻期間に応じて納付実績を分割するものです。支給される年金を分割するわけではないので、分割される側としては思ったよりも高額な年金を受け取るということはできないかもしれません。かといって、請求しなければ、受け取れる年金額が減ってしまいます。自動的に分割されるものではないので、必ず年金分割を請求するようにしましょう。
話し合いでの分割で合意できなければ、裁判などで争うことになります。年金分割の手続きは煩雑ですし、離婚時には年金分割以外にも財産分与や慰謝料などの大切なお金の問題が山積しているケースがほとんどです。離婚後の新生活を安定させるためにも、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
離婚に付随する年金分割問題に対応した経験が豊富なベリーベスト法律事務所 町田オフィスの弁護士が、親身になってアドバイスを行います。
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