「立ちんぼ」行為で女性・男性がそれぞれ問われる犯罪を解説

2023年08月15日
  • 性・風俗事件
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「立ちんぼ」行為で女性・男性がそれぞれ問われる犯罪を解説

町田駅の周辺は「西の歌舞伎町」と呼ばれるほど風俗店が多いエリアです。とくに「立ちんぼ」と呼ばれる街娼が見られることでも知られており、繁華街の一部では売春行為が堂々と行われているともいわれています。

警視庁は取り締まりを強化していますが、摘発するだけでは「お金のため、生活のため」という動機を解消するにはいたらないので、福祉との連携による解決が望まれている状況です。

「立ちんぼ」行為に関わった女性側と男性側は、それぞれ異なる犯罪に問われる可能性があります。本コラムでは「立ちんぼ」行為に関して問われる罪について、具体的な罪状や罰則などを、ベリーベスト法律事務所町田オフィスの弁護士が解説します。

1、「立ちんぼ」行為とは?

まず、「立ちんぼ」という行為の概要を解説します。

  1. (1)「立ちんぼ」の意味

    「立ちんぼ」とは、売春婦が街頭で売春相手を探す行為を指す俗語です
    街頭など公共の場所で売春相手となる客を探したり価格を交渉したりする行為は「街娼(がいしょう)」と呼ばれますが、とくに個人売春を目的に街頭に立って待機したり街頭を歩き回ったりするなどの行為が「立ちんぼ」と呼ばれています。

    なお、売春婦自身ではない関係者が売春相手を探したり価格交渉をしたりといった行為は「ポン引き」という俗称で区別されています。

  2. (2)立ちんぼ行為の現状

    立ちんぼは売春へとつながる行為であるため、警察によってたびたび大規模な摘発が行われています
    令和4年版の警察白書によると「街娼類」としての令和3年中の検挙人員は266人で、過去5年間のうちもっとも多い数字となりました。

    立ちんぼの摘発数が増えた一因は、新型コロナウイルスの影響や物価の高騰などにより生活が困難になったり貧困になったりした人が増えたことであるといわれています。
    令和5年7月現在、都内では、町田だけでなく新宿・歌舞伎町を中心に立ちんぼが増加しており、買春を目的とした男性だけでなく、冷やかし目的の第三者や動画配信者なども加わって立ちんぼスポットを訪れる人が増えている状況です。

2、売春をした女性側が問われる罪

以下では、「立ちんぼ」や売春行為をした女性側が問われる罪について解説します。

  1. (1)売春行為そのものを罰する規定は存在しない

    売春行為を規制する法律は「売春防止法」です。
    売春防止法第3条は「何人(なんぴと=すべての人)も、売春をし、またはその相手方となってはならない」と定めています。
    つまり、売春は売春防止法に反する違法行為です。

    ただし、現行の法律では、売春防止法においても他の法律においても、売春行為そのものに対する罰則は設けられていません。
    違法行為であるとはいえ、売春をしても刑罰を受けないというのが現状です。

  2. (2)売春相手を探すなどの行為は処罰されることがある

    売春行為そのものには罰則がありませんが、売春防止法には売春に関連する行為を処罰する規定が存在します

    • 勧誘等
    • 人を売春の相手方となるよう勧誘する、勧誘のため道路など公共の場所で人の身辺に立ちふさがったりつきまとったりする、売春相手を誘引するため公衆の目に触れるような方法で客待ちをするなどの行為は、売春防止法第5条に違反します。
      違反者には、6か月以下の懲役または1万円以下の罰金が科せられます
      「立ちんぼ」行為は、本条の違反となる可能性が高いでしょう。

    • 周旋等
    • 周旋とは、あっせん・仲立ちといった意味をもちます。他人を売春婦に引き合わせる行為は売春防止法第6条の違反となります。周旋の目的で勧誘したり、立ちふさがったり、つきまとったり、誘引したりといった行為も同じく処罰の対象となります。
      罰則は2年以下の懲役または5万円以下の罰金です

    • その他
    • 人を欺いたり困惑させたりして売春をさせた者(第7条)、売春をさせる目的で前貸しをした者(第9条)、売春をさせる契約をした者(第10条)、売春をすると知っていたうえで場所を提供した者(第11条)、自分が占有・管理する場所に売春婦を居住させて売春させる業をした者(第12条・管理売春)なども、処罰の対象になります。

      さらに、立ちんぼ、はいわゆる「迷惑防止条例」の違反になる可能性もあります。
      東京都の「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」では、第7条の「不当な客引行為等の禁止」の第1項2号において、売春類似行為をするために公衆の目に触れるような方法で客引きや客待ちをする行為を禁止しています。

      そもそも「売春」とは、売春防止法第2条において「対償を受け、または受ける約束で、不特定の相手方と性交すること」と定義しているため、性交などに至らない条件であれば売春とはいません。
      このようなケースでは、売春防止法違反ではなく、迷惑防止条例違反となる可能性があるのです。
      東京都の場合、罰則は50万円以下の罰金または拘留もしくは科料となっています

3、買春をした男性側が問われる罪

立ちんぼと交渉して客となった側の行為は「買春」と表現されます。
買春は売春と同じく「ばいしゅん」と読みますが、区別しやすいように「かいしゅん」と読むこともあります。

以下では、買春をした男性側が問われる罪について解説します。

  1. (1)買春行為も違法だが罰則が存在しない

    売春防止法第3条の規定に照らすと、誰もが売春の相手方になってはいけないと定められているので、買春行為も違法です。
    ただし、売春と同じく同条には罰則がないので、買春行為そのものは処罰されません。

    「処罰されない」とは、単に刑罰を科す規定がないだけです。
    決して「合法である」と認められているわけではなく、法律は「売春・買春をしてはならない」と明らかに禁止していることは認識しておいてください

  2. (2)相手が18歳未満の場合は「児童買春」として処罰される

    買春をしても処罰は受けませんが、これは相手が18歳以上の場合に限った話です。

    18歳未満の児童を相手に買春すると「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(通称:児童買春・児童ポルノ禁止法)」の第4条の違反になります。
    罰則は5年以下の懲役または300万円以下の罰金です

    立ちんぼをしている売春婦のなかには、年齢を偽っている未成年者も存在していると考えられます。
    法律上、相手が未成年であることを実際に知らずに買春をした場合には、児童買春は成立しません。
    しかし、売春婦が「成人している」と嘘をついたことを示す証拠がなければ、「相手が未成年であることを知らなかった」ということを警察・検察官や裁判官に信じてもらうことは難しいでしょう。

    とくに街頭での勧誘や価格交渉が中心となる立ちんぼが相手である場合には、証拠がまったく残らないことのほうが多いため、相手が未成年と知らなかった場合でも刑罰を科せられてしまうおそれがあるのです

4、売春・買春をしてしまったときは弁護士に相談を

売春と買春は、どちらも違法行為です。
単純な売春や買春であれば売春防止法による罰則は受けませんが、売春への関与の仕方によっては売春防止法違反に、未成年の児童を相手に買春をした場合は児童買春なら児童ポルノ禁止法違反によって処罰されるおそれがあります。

警察に発覚すれば逮捕され、厳しい刑罰を科せられるおそれがあるので、身に覚える方は積極的な解決を図るために弁護士への相談を検討しましょう。

  1. (1)「自首」すべきかどうかを判断できる

    売春や買春をしたことがまだ警察に発覚していないなら、みずから警察に罪を犯した事実を申告して処罰を求める「自首」をすることを検討してください。

    自首をすれば警察や検察官による捜査の対象になる事態は避けられなくなりますが、刑事裁判に発展しても法定刑が減じられる「減軽」を受けられる可能性が生じます。
    すすんで捜査に協力する姿勢を示せば、不起訴や執行猶予といった、有利な処分で済まされる可能性も高まるでしょう。

    自首を検討しているなら、自分だけで早まった判断をせず、自首が有効なケースであるかどうかを判断するために、まずは弁護士に相談してください

  2. (2)刑事事件に発展した際のサポートを依頼できる

    売春に深く関与したり、児童を相手とした買春をしてしまったりした場合は、売春防止法や児童買春・児童ポルノ禁止法などの違反になります。
    警察の捜査対象になり、検察官が起訴に踏み切れば刑事裁判によって裁かれ刑罰を科せられてしまうので、早急に弁護士に相談してください

    弁護士には、警察・検察官による取り調べでどのように受け答えすればよいのかのアドバイスや、逮捕されたときの接見、勾留による身柄拘束からの早期釈放、不起訴や執行猶予・罰金といった有利な処分を得るための弁護活動を依頼することができます。

5、まとめ

売春や買春は違法行為ですが、罰則は設けられていません。
ただし、街頭で売春の相手を探す「立ちんぼ」は、売春防止法によって禁止されている「勧誘等」や東京都の迷惑防止条例違反にあたる可能性があります。
また、立ちんぼを相手に買春をすると、売春婦が18歳未満の児童であれば児童買春となり、厳しく処罰されてしまうおそれがあるのです。

売春や買春に関わってしまい、逮捕や刑罰に不安を感じている方は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください
刑事事件の解決実績豊富な弁護士が、どのように対応すべきかのアドバイスを提供しながら、穏便な解決を目指して全力でサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています