偽ブランド品は所持しているだけで逮捕される? 知らなかった場合は?
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高級ブランドの商品が安く売っていて、購入したら偽物だったというケースは珍しくありません。そこで気になるのが「偽物は持っているだけで違法なのか」という点です。
本コラムでは、偽ブランド品は持っているだけで違法なのか、また偽物と気づかずに転売してしまった場合は逮捕されるのかどうかなど、偽ブランド品に関してよくある疑問にお答えします。
目次
1、偽ブランド品の販売は何の罪に該当する?
偽ブランド品(コピー商品)や高級ブランドのパロディー商品は、ネット通販などで多数販売されています。では偽物の製造や販売は何の法律に違反するのでしょうか?
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(1)商標法違反
偽ブランド品の製造・販売は、商標違反の罪に問われる可能性があります。
商標法では、商標権を侵害する行為を禁じています(商標法第78条)。
「商標」とは、自社の商品・サービスであることを示すロゴやネーミングのことで、その商標を守るのが「商標権」です。
知的財産権の一つで、特許庁に「商標登録」を申請して認められれば商標を独占使用できます。
その商標権を持つブランド側の許可なく、ロゴを真似たりブランド名を使用したりして偽物を製造・販売することは、商標権の侵害にあたります。
刑罰は、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方になります。法人が違反した場合には、最大で3億円以下の罰金が科される可能性があります(同法第82条)。
また本物そっくりのものを作るだけでなく、ブランドのロゴをまったく関係ない商品に印刷したり、パロディー商品を作ったりすることも「商標権侵害とみなす行為」として禁じられています。
刑罰は、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはその両方(同法第78条2)が科される可能性があります。たとえ販売ページに「偽物です」「パロディーです」と表記していたとしても、商標権を侵害していることには代わりありません。 -
(2)不正競争防止法
商標登録されていない商品についても、世間一般で特定のブランドのものだと認識されている名称やロゴなどを使用した場合には、不正競争防止法違反に問われる可能性があります。
罰則は、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはその両方になります。法人の場合は最大で3億円以下の罰金が科される可能性があります(不正競争防止法第22条、21条)。 -
(3)詐欺罪(刑法)
偽ブランド品を本物と偽って販売した場合、購入者をだましたとして刑法の詐欺罪に問われる可能性があります(刑法第246条)。
刑罰は「10年以下の懲役」です。
商標法違反の被害者はブランド側ですが、詐欺罪の被害者は消費者です。そのため偽ブランド品の販売は、一つの事案で商標法違反と詐欺罪の両方に問われる可能性があります。 -
(4)関税法違反
関税法では商標権を侵害するものの輸入を禁じています(関税法第69条11第1項第9号)。偽ブランド品を販売目的で海外から輸入した場合、関税法違反に問われる可能性があります。
違反した場合の罰則は、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方になります。(同法第109条第2項)。
偽ブランド品を海外から輸入して販売した場合には、関税法と商標法、両方の違反に該当します。また、本物のブランド品として偽って販売した場合は詐欺罪にも違反する可能性があります。
2、偽ブランド品は所持しているだけで逮捕される? 知らなかった場合は?
偽物だと知っていても「安いからいい」と購入する方はいるでしょう。では偽ブランド品を購入・所持することは違法なのでしょうか? 偽物だと気づかなかった場合はどうなるのでしょうか?
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(1)自己使用目的の場合の購入・所持は罪に問われない
商標法が対象とするのは業として行う偽ブランド品の製造・販売です(商標法2条第1項)。
そのため自己使用目的の購入や所持は、原則として罪に問われません。
偽ブランド品だと知っていても知らなかったとしても、転売を目的とせず、あくまで自分で使うためであれば、購入しただけで逮捕されることはありません。
偽物だと知りながら「販売目的」で所持していた場合には、商標権侵害とみなす行為として、商標法違反に問われます(商標法第37条第6号)。 -
(2)偽物だと気づかなかった場合は罪に問われない
購入した商品が偽物だと気づかず他人に販売してしまった場合は、原則として罪に問われません。
商標法や関税法、詐欺罪は「故意」が必須条件です。そのため「本物だと思っていた」「相手をだますつもりはなかった」という場合は、罪は成立しません。
ただし偽ブランド品を格安で大量に仕入れて高額で転売しておきながら「本物だと思っていた」と主張しても、まず警察には信じてもらえないでしょう。
警察は被疑者の言い分だけでなく、被害額や手口などを総合的に考慮して逮捕するかどうかを判断します。
3、購入・所持した偽ブランド品は没収される?
テレビニュースでは、税関が押収した偽ブランド品を廃棄する様子が報道されることがあります。では輸入した偽ブランド品は、すべて没収されてしまうのでしょうか?
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(1)海外から購入したものは没収対象
偽ブランド品など商標権を侵害している品物が輸入される場合、関税法に基づき税関はそれらを没収・廃棄できます(関税法第69条の11第2項)。
業者が海外から偽ブランド品を輸入した場合、空港や港の税関で商品が没収されます。海外旅行先で購入した偽ブランド品も、日本に持ち込もうとすると空港の税関検査で没収されます。
偽ブランド品を大量かつ継続的に輸入するなど、手口が悪質な場合は税関が刑事告発することもあります。
なおこれまでは、主に業者が仕入れたケースが規制対象となっており、個人輸入は原則として規制対象外でした。
ところが個人輸入を装って販売目的で偽物を輸入する事例が跡を絶たないため、政府は個人輸入についても規制を強化する方針を打ち出しており、今後は個人輸入についてもより一層の注意が必要です。 -
(2)税関から「認定手続開始通知書」が届くことも
税関は偽ブランド品とみられる商品を発見した場合、商標権を侵害しているかどうかを確かめるための手続きを始めます。
その際、輸入者に対してそれを知らせる「認定手続開始通知書」を送ります。
通知書が届いたということは税関が「怪しい」と思っているということであり、警察が捜査を始める可能性もあります。通知書が届いたら弁護士に相談されることをおすすめします。
4、偽ブランド品を販売目的で所持・販売し、逮捕される場合の流れ
偽ブランド品の販売目的での所持や販売は違法であり、逮捕される可能性があります。逮捕された場合、できるだけ早く弁護士に相談することが大事です。
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(1)偽ブランド品の販売で逮捕された場合の流れ
偽ブランド品を所持・販売したとして逮捕された場合、主に次のような流れで手続きが進みます。
- 逮捕
- 検察に送致
- 勾留が認められれば最大10日間勾留
- 勾留延長が認められればさらに最大10日間勾留
- 検察が起訴すれば刑事裁判、不起訴になれば釈放
- 刑事裁判の判決
逮捕から起訴・不起訴処分の決定までは最大23日間です。起訴されればさらに裁判まで1か月〜数か月かかるでしょう。
身柄が勾留された場合には警察の留置場で過ごすことになり、自宅には帰れず仕事にも行けません。また有罪判決を受ければ前科がつき、執行猶予がつかない実刑判決の場合は刑務所に入らなければいけません。 -
(2)逮捕されたらすぐに弁護士に相談
偽ブランド品の輸入や販売をしてしまい、商標法や関税法違反容疑で逮捕された場合は、すぐに弁護士に相談しましょう。
「手口が悪質ではない」「被害額が少ない」「前科がない」といった場合には、弁護士が警察や検察に働きかけることで早期釈放や不起訴処分を得られる可能性があります。
起訴され裁判になってしまっても、被害者との示談や被害弁償などを進めることで、罰金刑や執行猶予判決が期待できます。
弁護士に依頼すれば、取り調べに対するアドバイスや被害者との示談交渉、証拠の収集など、さまざまなサポートをしてもらえます。本人や家族の精神的な支えにもなるでしょう。
また偽ブランド品の製造・販売については、商標権者であるブランド側から損害賠償を請求される可能性があります。これについても弁護士がいれば、刑事裁判と合わせて民事裁判の対応も任せられます。
5、まとめ
偽ブランド品は私たちの身の回りにあふれており、輸入したり販売したりすることに対して罪の意識がない方もいるかもしれません。ですが警察や税関はちゃんと調べています。
税関から通知書が届いたり警察に逮捕されたりした場合は、すぐにベリーベスト法律事務所町田オフィスにご相談ください。弁護士やスタッフがご事情を確認し、被害者との示談や裁判のサポートなど、全力で対応いたします。
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