連続勤務日数は何日までが上限? 労働基準法上の規定と違法時の対応

2024年05月30日
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連続勤務日数は何日までが上限? 労働基準法上の規定と違法時の対応

労働基準法では、連続勤務は何日間までが適法となるのかなどの上限が定められています。実際に、労働基準法をはじめとした各種労働法に違反した企業名やその概要は、町田市を管轄とする東京労働局のサイトなどに「労働基準関係法令違反に係る公表事案」として掲載されることとなります。

しかし、「たとえ世間では働き方改革といわれていても、自社には関係がない」というケースはいまだ少なくないようです。そこで本コラムでは、労働基準法の規定を解説しながら、連続勤務が認められる日数やその上限、休日出勤した場合の割増賃金の計算方法などを、ベリーベスト法律事務所 町田オフィスの弁護士が解説します。


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1、連続勤務で違法にならないのは何日まで?

会社や団体に雇用されて働いている方の休日や労働時間などは、労働基準法の定めに従って保護されています。
では、労働基準法によって認められている範囲の連続勤務は何日までなのでしょうか?

  1. (1)労働基準法の規定では最大12日

    労働者の休日については、労働基準法第35条第1項の定めがあります。

    労働基準法第35条第1項
    「使用者は、労働者に対して、毎週少くとも1回の休日を与えなければならない」


    この条文を読み解くと「1週間につき1回の休日が必要」となるため、連続勤務の日数は1週間=7日間から休日1日を差し引いた「6日まで」と考える方が多いでしょう。
    ところが、その計算は間違いです。


    まず、労働基準法における「1週間」は、就業規則などにおいて特定の曜日が週の起算点として定められていればそれによりますが、定めがなければ、日曜日が起算日となります。

    ここで、わかりやすく例示するために、ある月の1日が日曜日で、その日は休日だったとしましょう。
    第1週の1~7日は、初日が休みになっただけで残りの6日間は勤務しました。
    8日の日曜日から第2週が始まりますが、仕事が忙しく休みがもらえませんでした。
    しかし「1週間につき1回の休日が必要」ですから、第2週のどこかで休日がないと労働基準法に違反してしまいます。
    そこで、第2週の最終日となる14日の土曜日に休日が与えられました。
    第1週の1日から第2週の14日までの間に、第1週には1日に、第2週では14日に休日があるので、第35条第1項の規定には反しません。
    連続で勤務したのは、2日の月曜日から翌週13日の金曜日までの12日間です。

    つまり、労働基準法第35条第1項の規定に従った場合、連続勤務で適法と認められるのは「12日まで」となります。
    労働基準法で定められている「1週間につき1回の休日」は、1週間のうちどの日を休みにしても問題はありません。
    1週間の最初でも最後でも適法となるため、1週目の最初と2週目の最後が休日になれば12日間の連続勤務も適法となるわけです。

  2. (2)違反した場合の罰則

    労働基準法の規定に違反して1週間に1回の休日を与えなかった場合、使用者には6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられることがあります(労働基準法第119条第1号)。

    ここでいう「使用者」とは、「事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者」(労働基準法第10条)をいいます。
    具体的には、個人事業主であれば企業主、法人企業であれば法人、法人の理事、取締役などの経営担当者のほか、労務管理等の指揮監督・決定権限一定を持つ者が「使用者」となります。

2、変形休日制における連続勤務日数の上限

労働基準法の定めによれば、連続勤務が認められる上限は12日間です。
ところが「変形休日制」を採用している場合は、最大で24日間の連続勤務が適法と認められます。

  1. (1)変形休日制とは?

    変形休日制は、労働基準法第35条②に規定されています。

    労働基準法第35条②
    「前項の規定は、4週間を通じ4日以上の休日を与える使用者については適用しない」


    変形休日制では、4週間のなかに4日以上の休みがあればよいとされています。
    たとえば、4週間の最初に4日の休日を与えて、残りの日をすべて勤務させても違法にはなりません。
    4週間=28日ですから、最低4日の休日を差し引いて連続24日までの勤務が可能となります。

  2. (2)変形休日制が導入されている場合のポイント

    変形休日制の導入には一定の要件があり、たとえば連続勤務が続いたからといって何の用意や前触れもなく「今月は変形休日制だったということにする」といった運用はできません。

    変形休日制を導入する場合は、次の要件を満たす必要があります。

    • 4日以上の休日を与えることとする「4週間」の起算日を就業規則に明記する(労働基準法施行規則第12条の2②)
    • 労働者10人未満の場合、就業規則の作成義務がないため、就業規則に準じるものにより変形休日制を定めたことを従業員に周知させる義務ある

3、休日割増賃金(休日手当)はもらえる? 対象日の考え方と計算方法

休みなく連続で勤務し、本来は休みだったはずの日にも働いていたとすれば「休日手当をもらえるはずだ」という疑問を感じるでしょう。
連続勤務をした場合の休日割増賃金について解説します。

  1. (1)休日割増賃金の対象日

    労働基準法の定めに照らして、本来は休日が存在するはずだったのに連続勤務をしていた場合は、1週間につき1日が休日割増賃金の対象日となります。
    変形休日制の場合も同様で、4週間のうち最低4回の休日が守られていなければ、不足する日数分が休日割増賃金の対象となります。

    ここで誤解が多いのが「休日手当さえ支払っていれば問題がないのか?」という点です。
    休日出勤をおこなわせる場合は、事前に「時間外・休日労働に関する労使協定」、いわゆる「36協定」を労働基準監督署に提出する必要があります。
    36協定が存在しない場合、休日割増賃金を支払ったとしても労働基準法に規定された休日がない場合は違法となります。

  2. (2)休日割増賃金の計算方法

    休日に出勤した場合、通常の計算額の3割5分以上で割増賃金を計算します。
    たとえば、1日8時間勤務で日給1万円の計算になる場合、休日出勤すれば最低でも1万3500円が支払われる計算になります。

    ここで注意が必要なのが「時間外労働」との関係です。
    たとえ労働基準法の範囲内で休日が与えられていたとしても、1週間につき40時間の法定労働時間を超えた時間は時間外労働とみなし、割増賃金の対象となります。
    時間外労働に対しては、通常の2割5分以上の割増賃金で計算され、さらに1か月の時間外労働が60時間を越えた部分には5割以上の割増賃金で計算されます。
    この場合も「割増賃金を支払っているから問題ない」のではなく、事前に36協定を結んでいないと違法になります。

4、会社の出勤指示が違法と思った場合の対処法

会社に連続勤務を命じられて、労働基準法に違反するのではないかと感じた場合、どのように対処すべきなのでしょうか?

  1. (1)就業規則を確認する

    出勤指示が違法だと感じた場合、まずは就業規則を確認しましょう。
    就業規則には、必ず労働事項に関する事項として、休日の日数や設定方法が記載されています。
    1週間に1日なのか、4週4休なのかは、必ず就業規則に記載されているため、出勤指示が適法であるかを確認する根拠となります。

  2. (2)労働相談の窓口に相談する

    就業規則を確認したうえで「やはり違法ではないか?」と疑いが濃くなった場合は、労働相談の窓口を利用しましょう。

    管轄の労働基準監督署、各都道府県の労働局が設置する総合労働相談コーナーなどに相談し、専門家の知見から違法性がないかをチェックしてもらえば、違法・適法の判断ができます。
    会社への指導を含めた対処を求める場合は諸官庁の助けが必要です。
    就業規則や勤怠が確認できるタイムカード、出勤簿のコピー、給与明細などの証拠をそろえて相談しましょう。

  3. (3)弁護士に相談する

    休みなく連続勤務をしたにもかかわらず休日手当がついていない、改善を求めているにもかかわらず連続勤務を強いられて体調不良やケガの原因になった……
    このようなトラブルを抱えている場合には、弁護士への相談がおすすめです。

    勤務先や元勤務先に対して、休日手当分の支払いや賠償を求めるのは、やはり気が引けてしまうものです。
    また、個人が休日割増賃金の支払いを求めても、会社側は何かと理由をつけて対応しないケースが多いので、解決は難しいでしょう。

    弁護士に相談すれば、まず連続勤務が適法なのか、休日割増賃金が発生するべきなのかを法的な視点から正しく判断できます。
    休日割増賃金が発生する場合は、請求時から過去3年にさかのぼって支払いを求めることが可能なので、常態的に連続勤務が発生していれば請求するべきです。
    弁護士からの請求であれば会社も相応の対応が必要となり、また、会社側が支払いに応じない場合は裁判の手続きにして訴えることもできます。

    さらには、たとえ労働基準法に照らして適法だったとしても、連続勤務が理由で体調不良やケガが発生した場合には、損害賠償の請求を検討するべきです。
    連続勤務と体調不良やケガとの因果関係を証明するには、弁護士へ依頼されることをおすすめします。

5、まとめ

連続勤務日数が適法となる上限は、労働基準法上でいえば12日です。ただし、変形休日性が採用され4週間のうちに4日以上の休日がある場合は除きます。会社から出勤指示を受けると、たとえ12日を超える連続勤務で疲れ果てていても指示に従ってしまうケースは少なくないようです。しかし、違法な出勤指示であれば本来従うべきではありません。
また、法令の定めを無視して割増賃金を支払わないなどの行為があれば、適法に支払いを求めて、労働の対価をしっかりと得るべきでしょう。

連続出勤や休日・時間外の割増賃金、未払いの残業代などのトラブルでお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所・町田オフィスまで、お気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています