【経営者向け】 学習塾のクレーマー保護者の対処方法について
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学習塾に通う生徒の保護者から理不尽なクレームを突きつけられた際、適切に対応しておかないと、誤解や風評などで立て続けに辞めていく生徒が出て、将来的に廃業につながるリスクがあります。そうした事態をおそれるあまり、毅然とした対応ができないところも多いでしょう。
本記事では、クレーマーへの対処法やクレーム対応を弁護士に依頼するメリットについて、町田オフィスの弁護士が解説します。
1、塾の経営者が悩まされる、クレーマー問題とは?
少子化の波を受けて、生徒の獲得が難しくなっている学習塾では、退塾者を出さないことに苦慮している一方で、理不尽なクレーマー問題にも頭を悩ませているところは少なくありません。
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(1)塾にもいる「モンスターペアレント」
モンスターペアレントといえば、学校に対するクレーマーのようなイメージがありますが、子どもの通う学習塾にもモンスターペアレントは存在します。学習塾へのクレームは、教師やスタッフのミスが原因であるものもありますが、理不尽な要求を突きつけるものもあります。
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(2)塾でよくあるクレーム
塾でよくあるクレームは以下のようなものです。
● 成績が上がらない
生徒保護者の中には塾に通っているだけで成績がアップするものと考えている方も少なくありません。そのため、子どもの成績が上がらないと「うちの子の成績が上がらないのは先生の教え方が悪い」などとクレームをつけてくる保護者もいます。
● 授業がわかりにくい
特に指導経験の浅い新人講師が教えている授業では、「子どもが『授業がわかりにくい』と言っている」などと授業の質についてクレームが来ることがあります。個別指導塾であれば「授業がわかりにくいので担当を変えてほしい」と言われることもあるでしょう。
● 子どもの言うことを鵜吞みにする
授業中にふざけている子どもを講師が叱ったときに、怒られた子どもが親に「先生が急に怒り出した」などと伝えることもあります。そうすると、その子どもにも原因があるにもかかわらず親は子どもの言うことを鵜呑みにして「急に怒り出すとは何事だ」とクレームが来ることがあります。
● 費用が高い
「普段の授業料や長期休暇中の特別講習などの費用が高い」というクレームもあります。中には「成績が下がったから払わない」という保護者もいるようです。 -
(3)クレームが塾にもたらす影響とは?
同じ塾の保護者の間で悪評が広まり、退塾する生徒が次々と出てくる可能性があります。また、2ちゃんねるをはじめとするインターネット掲示板やSNS等にあることないことを書きこまれ、思いがけない風評被害を受けることもあるでしょう。そのような被害を防ぐためにも、運営者側はクレームには誠実かつ真剣に対応しなければなりません。
2、クレーマー親への対処方法とは?
クレーマーへの対応はその人の対応力任せでは対応の仕方にむらができてしまいます。特に、社歴の浅くその塾の事情をまだ完全には把握できていないスタッフには、クレーム対応は非常に難しいでしょう。そのため、クレームがあったときにそなえ、日頃からできることは準備しておくことをおすすめします。
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(1)クレーム対応をマニュアル化しておく
事前準備として、クレーマーへの対応方法をケース別に分類してマニュアル化しておきましょう。「こう言われたらこう答える」という内容があらかじめ決まっていれば、社歴の浅いスタッフでも対応できるためです。もしマニュアルに当てはまらなかったり、話がこじれそうになった場合は、本部のスタッフや塾長などの校舎運営者にスムーズに対応を依頼できるというルールも明確にしておきます。長時間相手を待たせてしまい相手方の機嫌をますます損ねてしまうことのないよう、引き継ぎは迅速に行いましょう。
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(2)まずは相手の話をしっかり聞く
実際に保護者から何らかのクレームが来たら、まずは相手の話をしっかり聞くことから始めましょう。相手方は感情的に怒りをぶつけてくるかもしれませんが、こちら側まで感情的な対応をしては火に油を注ぐことにもなりかねないので、あくまでも冷静に受け答えをすることが大切です。そのうえで、相手方の言い分が正当であるかどうかを判断し、マニュアルに沿って対応しましょう。不快な思いをさせてしまった点については真摯(しんし)に謝罪をすると、相手の怒りがある程度おさまることもあります。
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(3)会話内容を録音する
保護者からのクレームを電話で受けるときは、会話内容を録音しておきましょう。防犯カメラを設置してある応接室であれば、交渉の過程を録画しておくのもおすすめです。録音や録画があれば、「言った・言わない」の争いを未然に防止できますし、万が一訴訟になったときにも有力な証拠になります。
いきなり録音や録画をされると怒り出す保護者もいます。また個人情報保護の観点からも、あらかじめ保護者向けの入塾説明会や保護者セミナーなどの場で「サービス向上のため、保護者との電話の会話内容はすべて録音しています」「保護者や生徒と二者面談や三者面談をするときは防犯カメラで録画しています」などと周知しておくとよいでしょう。 -
(4)警察に相談する
相手方の態度が威圧的で危害を受けるおそれがある場合は、警察に相談するのもひとつの方法です。たとえば、相手が暴力をふるった場合は暴行罪、「塾に火をつけるぞ」などと脅迫してきた場合は脅迫罪にあたります。また、塾のスタッフが「帰ってほしい」と言っているのに長時間居座っている場合は不退去罪となることもあります。身の危険を感じたときには警察を呼ぶようにしましょう。
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(5)法的措置を検討する
相手が月謝など必要なお金をどうしても支払わない、スタッフが暴行されるなどの被害が出た、といった場合は、法的措置も検討することが必要です。長期にわたる月謝の未払い・不払いであれば、損害賠償請求訴訟などの法的措置も検討したほうがよいでしょう。スタッフや塾長が暴力をふるわれた、脅迫されたなどの場合は暴行罪、脅迫罪、威力業務妨害罪などで警察に被害届を出すことも検討する必要があります。
3、クレーマー対応について、弁護士に依頼することのメリットとは?
クレーマー対応を弁護士に依頼すれば、塾の運営者やスタッフだけで対応しきないようなトラブルにも対応できます。弁護士という法律の専門家を介することで、保護者・運営者双方が冷静に話し合いをできて、迅速な問題解決にもつながるでしょう、
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(1)弁護士が出てきた時点でクレームがやむ可能性がある
クレーマーは、塾の運営側にはとても強気で傲慢な態度を見せていても、弁護士が出てくると冷静さを取り戻す可能性があります。そうなると、クレーマーにとっては「弁護士がいる手前、下手なことは言えない」と感じて、クレームがその時点でやむことも多くあります。
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(2)口コミサイトに悪評を書かれたときも対処できる
クレーム対応の仕方によっては、保護者が口コミサイトやSNSに「〇〇塾は教え方が悪い」などと塾の評判をおとしめるような書き込みをする可能性があります。また、中学生や高校生であれば、自分でSNSやインターネット掲示板にデマを書き込むことも考えられるでしょう。弁護士は、クレーム対応のみならず投稿の削除や発信者情報開示請求などの手続きについても詳しいので、具体的対処方法について相談できます。
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(3)必要に応じて訴訟など法的措置もとれる
保護者側と交渉を続けていても平行線をたどったまま話が進まない場合やスタッフに被害などがあれば、訴訟など法的措置も検討すべきでしょう。そのときも弁護士がサポートについていれば適切に対処することが可能です。裁判所での手続きなどについても弁護士に一任できるので、塾の運営者は校舎運営や授業の準備などの本業に専念したまま問題解決に向けて歩みを進められるでしょう。
4、まとめ
保護者からのクレームは、きちんと対応しなければひとつの小さなトラブルをきっかけにどんどんエスカレートしかねません。事前にクレーム対応マニュアルは整備してスタッフ全員に周知しておくべきですが、それでも対応できないような案件は早めに弁護士に相談されるほうがよいでしょう。
ベリーベスト法律事務所 町田オフィスでは学習塾の経営者からのクレーマーについてのご相談も承っております。ひとりで悩まずに、まずは当事務所までお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています