契約の効力発生日はいつになる? 締結日との違いなど契約の基礎を解説
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通常、契約書には日付が記載されますが、どの日付をどのような意味合いで記載するかには注意が必要です。
特にフリーランスとして独立してすぐに企業などと業務委託契約を結ぶような場合、契約書の書き方をよく理解しないままに日付を記載すれば後々トラブルになることも少なくありません。
内閣府の調査では、令和元年時点でフリーランスとして働く人は300万人以上、国内就業者全体の約5%を占めると推計されています。町田市でも一定数がいると予想されます。
では契約書にはどのような日付の種類があるのでしょうか? 契約効力発生日とはいつになるのでしょうか? わかりやすく解説します。
1、契約書の日付をめぐるトラブルと注意点
一般的に契約書には使う日付には3種類あり、それぞれ意味や効力が違います。適当な日付を書いたり空欄にしたりするのはよくありません。
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(1)必須ではないが、契約書は作成しよう
そもそも契約は、お互いが合意していれば口頭でも成立します。両者が合意に至った日が、契約が成立した日です。契約書の作成は必須ではありません。
ところが口約束だけの場合、お互いの記憶以外に契約したという証拠がないため、後になって「そんな約束していない」「内容が違う」などとトラブルになる可能性があります。
また契約の詳細もあいまいになるため、条件変更の際などにもめることにもなりかねません。
そこで一般的には契約内容を明らかにし、本当に契約したことやその時期を示す「証拠」として契約書を作成・利用します。
契約書を作成する工程を挟むことで、安易に契約を結ぶことを防ぐことにもつながります。
企業間の取引でもフリーランスの業務委託でも、特別な事情がない限り、必ず契約書は作成しましょう。
なお保証契約を代表に一部の契約についてはもともと法律で書面作成が義務付けられています。 -
(2)契約書でよく使われる3つの日付
契約書では、次の3種類の日付の扱いが問題となりがちです。
- 契約書作成日:契約書を作成した日、記入日
- 契約締結日:契約書に署名・押印するなど実際に契約を締結した日
- 契約効力発生日:契約の効力が発生する日、契約開始日、契約期間の初日
この3つは契約書に必ずすべて含まれていなければいけないわけではありません。
たとえば効力発生日を定めていない場合、原則として契約締結日が効力発生日と認識されます。
また法律上、契約締結日や効力発生日をいつに設定するかについて、決まりはありません。
契約関連の日付や契約書の内容は、当事者間で協議をして決めていきます。 -
(3)過去の日付を「契約締結日」とする「バックデート」はやめよう
契約は口頭でも成立するため、契約書を作成せずに取引を始めるケースは珍しくありません。それでも契約自体は有効で、法律上問題はありません。ところがその後、方針が変わって契約書を作成することになることがあります。
その際、問題になりがちなのが「契約締結日」を過去の日付に設定する、いわゆる「バックデート(バックデイト)」です。
たとえば「5月1日」に契約書に署名・押印したものの、書類には「4月1日」を契約締結日として記載するといった場合です。
実際にこのようなバックデートはよくあります。
「両者が納得していればいいのでは」と考えるかもしれませんが、本当の契約締結日と違う日付を記載することはうそであり、コンプライアンス上問題があります。
法律で規制されている「虚偽表示」にあたるとして、無効になる可能性もあります(民法第94条1)。
また本来の契約日と書類上の契約日の間にトラブルが起きた際に、責任の所在があいまいになるほか、契約書の信用性にも疑問符がつきます。
取引先に依頼されたとしても、バックデートは断りましょう。 -
(4)過去の日付を「効力発生日」とする「遡及契約」はOK
契約締結日を過去に設定することに問題があるとわかっていても、実務上、どうしても契約開始の時期を前の日付にしたいこともあるでしょう。たとえば4月1日から仕事を依頼しているものの、担当者の病気などによって事前に契約手続きができず、5月1日になってしまった場合です。
そういった場合はバックデートの代替手段として、契約書に遡った日付を「効力発生日」として記載する「遡及契約(遡及適用、遡及効)」が活用できます。
たとえば次のような文言です。○の部分を過去に日付にします。
「契約締結日にかかわらず、効力発生日は○年○月○日とする」
「本契約は○年○月○日に遡って適用する」
効力発生日は法律で細かく定められていないため、過去はもちろん、締結の翌月など、未来の日付に設定にすることも可能です。いずれも違法ではありません。
わざわざコンプライアンス上の問題があるバックデートをしなくても、遡及契約にすればなんら問題のない契約ができるのです。
効力発生日を過去や未来の日付に設定したい場合には、取引先と話し合い、合意のうえで遡及契約を利用しましょう。
2、契約書の日付を空欄にした場合に起こりうる問題とは
契約締結の際、日付の欄を空欄にしてしまう方は少なくありません。特に郵送で書類が送られてきた場合、勝手に日付を記載していいのかがわからず、空欄で返送してしまう方はいるでしょう。では空欄にするとどのような問題が起きるのでしょうか?
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(1)契約の有効期間があいまいになる
契約書では、契約の有効期間の起点に契約締結日を設定していることが少なくありません。
たとえば次のような記載です。
「本契約の有効期限は、契約締結日から1年間とする」
「契約締結日から○日以内に〜する」
この場合、契約締結日の記載がなければ契約の有効期間が不明確になります。
するとトラブルが起きた際に契約の有効性が確認できず、不利益を被る可能性があります。
契約の際は契約締結日や契約効力発生日がきちんと記載されているか、必ずチェックしましょう。 -
(2)空欄のまま返送するのは避ける
「調印式」などの形式で当事者同士が対面で契約書に署名する場合、一般的にはその日付を契約日として記載します。
ところが郵送で契約書のやりとりをする場合、日付欄が空欄で、自分で記入しなければいけないことがあります。
契約の際、一般的には同じ書類を2通作成して署名・押印のうえで互いに1通ずつ保管します。契約日を事前の話し合いで決めている場合には、その日付を記載すれば良いでしょう。
一方で相手との合意がなく、かつ日付が空欄で送られたきた場合には、記入せずに返送すると相手が気づかず空欄のままで契約が進んでしまうおそれがあります。
先方が勝手に契約日を決めてしまうかもしれません。そうなればトラブルの種になりかねません。
契約書を取り交わす際は、必ず相手に契約締結日や効力発生日を確認し、日付が空欄になった契約書とならないように気をつけましょう。
3、契約書でもめた場合は弁護士に相談
契約書は総務部門などでない限りなじみがないため、契約手続きや契約書の内容をよく確認せずに契約してしまう方は珍しくありません。
その場合、知らないうちに契約書に自分にとって不利な内容が組み込まれているかもしれません。
特にフリーランスになったばかりの方などは、契約に関する知識がなく、会社の後ろ盾もないため、契約書をめぐって取引先とトラブルになることもあります。
契約書に関してもめた場合は、すぐに弁護士に相談しましょう。
弁護士は契約内容を確認し、法律的な問題点を洗い出して解決方法をアドバイスします。
取引先との力関係で、不利益を受けても声を上げられない方もいるかもしれませんが、弁護士は相手と交渉し、解決を図ります。
4、契約トラブル防止には顧問弁護士を
契約トラブルが発生した場合、すぐに弁護士に相談することは大事ですが、そもそもトラブルにならないことが一番よいはずです。
とはいえ企業の社長であっても、契約関連のルールや法律を正確に把握している方は多くありません。
そこで普段から契約内容をチェックしてくれるパートナーとして、顧問弁護士の利用がおすすめです。
顧問弁護士は契約書のリーガルチェックのほか、社内規定の整備や労働問題、知的財産問題など、企業が直面しがちなあらゆる分野の相談に対応します。
利用者・利用企業が取引先や消費者と訴訟になった際にも、裁判の手続きに詳しく、かつ普段から自社のことを理解してくれている顧問弁護士がいれば安心です。
5、まとめ
契約をめぐるトラブルは頻繁に起きています。自分・自社を守るためには、適切な内容の契約書を作成することが欠かせません。ベリーベスト法律事務所では、サポート内容に合わせて月額3,980円から利用できる顧問弁護士サービスをご用意しております。
契約など企業法務で不安をお持ちの場合は、まずはご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています