入札談合は逮捕される? 公務員はどんな罪に問われる? ポイントを解説

2022年02月07日
  • 財産事件
  • 談合
  • 逮捕
入札談合は逮捕される? 公務員はどんな罪に問われる? ポイントを解説

小説やドラマでテーマとしてよく取り上げられる談合ですが、現代社会でも頻繁に行われています。犯罪白書によると、平成30年の検察庁新規受理人員のうち談合に関するものは「公契約関係競売入札妨害・談合」が51人、「談合」が25人、「入札談合等関与行為防止法」が38人でした。

町田市では「贈賄、競売等妨害、談合」を理由として7社が令和2年6月から一定期間、市発注工事の入札参加資格を停止されています。

ではそもそも談合とはどのような行為で、どの法律に違反するのでしょうか?また公務員が行った場合は、何か違いがあるのでしょうか?詳しく解説します。

1、談合とは?

「談合」とは、国や地方自治体が発注する公共工事などの競争入札において、あらかじめ参加業者同士が話し合って入札価格や落札者を決めておくことです。

通常は業者がそれぞれ独自に金額を決めて入札し、競争原理のもとに落札者が決まります。
ところが事前に「今回はA社が落札できるようにしましょう」「それぞれ入札価格はこのくらいにしましょう」などと筋書きを決めるために競争が行われず、価格は不当につりあがります。

たとえば市が発注する10億円の建設工事で、最低制限価格が8億円だったとします。
そこでA、B、C社が談合をし、A社が9億円で落札すると決めて、B社は9億3000万円、C社が9億5000万円で入札します。
その結果、予定通りA社が9億円で落札することが決まります。

本来であれば8億円で入札される可能性もあったはずなのに、談合によって1億円も高い価格で発注が決まったために、市は不利益を被ります
これは納税者である市民が不利益を受けたことと同義です。

そのためこのような談合行為は法律により禁じられており、違反した場合には罪に問われます

談合というと工事のイメージをもたれがちですが、実際には物品の発注や業務の委託など、多岐にわたります。

2、談合行為はどんな罪に問われる?

談合をした業者は「刑法の談合罪」と「独占禁止法違反」に問われるケースが多い傾向にあります。ここではそれぞれの法律の内容や刑罰をご説明します。

  1. (1)刑法の談合罪

    業者間で入札前に話し合い、落札業者や価格を決めるなどした場合には、刑法の「談合罪(公契約関係談合罪)」に問われる可能性があります。

    (刑法第96条の6第2項)
    公正な価格を害し又は不正な利益を得る目的で、談合した者も、前項と同様とする


    刑罰は「3年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金、またはその両方」です。

  2. (2)独占禁止法

    談合は独占禁止法でも禁じられています。

    (独占禁止法第3条)
    事業者は、私的独占又は不当な取引制限をしてはならない


    この「不当な取引制限」にあたるのが「入札談合」と「カルテル」です。

    刑罰は「5年以下の懲役または500万円以下の罰金」です。未遂でも刑罰の対象です。

    なお独占禁止法では、社員が入札談合をした場合、両罰規定より所属する法人も5億円以下の罰金の対象です。
    また法人代表者も談合の計画を知りながら止めなかった場合には500万円以下の罰金が科される可能性があります(同法第95条)。

    独占禁止法は警察ではなく、公正取引委員会が運用しています。
    委員会は対象事件について調査を行い、悪質な場合には刑事告発し、検察が必要に応じて逮捕します。

    また刑事罰のほか、内容によっては委員会から排除措置命令や課徴金納付命令が出されることがあります。

3、談合に公務員が関与した場合に問われる罪

多くの談合事件で、発注側である国や自治体の職員が関与しています。公務員が関与していた場合は、独占禁止法や談合罪ではなく「官製談合防止法」が適用されます。

  1. (1)官製談合防止法違反罪

    行政の担当者が公共工事の予定価格を漏えいしたり談合に関与したりした場合、官製談合防止法(入札談合等関与行為の排除及び防止に関する法律)違反罪に問われる可能性があります。

    (官製談合防止法第8条)
    職員が、その所属する国等が入札等により行う売買、貸借、請負その他の契約の締結に関し、その職務に反し、事業者その他の者に談合を唆すこと、事業者その他の者に予定価格その他の入札等に関する秘密を教示すること又はその他の方法により、当該入札等の公正を害すべき行為を行ったときは、5年以下の懲役又は250万円以下の罰金に処する


    具体的にどのような行為が規制されているかについては、官製談合防止法において「入札談合等関与行為」として次の4つがあげられています。

    1. ① 業者への談合の指示(例:市職員が各建設会社への工事の割り振りを決めた)
    2. ② 受注者の指名、希望の表明(例:省庁職員が建設工事を請負う企業を決めた)
    3. ③ 秘密情報の漏えい(例:入札前に非公開の予定価格を事業者に教えた)
    4. ④ 入札談合の手助け(例:建設会社から頼まれ、指名競争入札でその会社を指名した)


    なお対象となるのは国や地方公共団体の職員だけでなく、特定法人の役員・職員も含まれます。同法は公務員の行為を規制するものですが、業者側が共犯に問われることもあります

    違反した場合の刑罰は「5年以下の懲役または250万円以下の罰金」です。
    公務員が関与したという点を考慮し、談合罪や独占禁止法に比べて刑罰は重くなっています。

    また職員が入札談合等関与行為をした場合、当該の省庁や団体などは公正取引委員会から改善措置要求を受ける可能性があります(同法3〜5条)。

    その場合、省庁などは調査を行い、結果や対応策を公表するほか、必要に応じて職員への損害賠償請求や職員の懲戒処分も行わなければいけません。

  2. (2)公契約関係競売入札妨害罪

    公務員が予定価格を漏えいし、公正な入札が妨げた場合は刑法の「公契約関係競売入札妨害罪」に問われる可能性があります。

    (刑法第96条)
    偽計又は威力を用いて、公の競売又は入札で契約を締結するためのものの公正を害すべき行為をした者は、3年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する


    一般的に、談合は談合罪や独占禁止法違反罪が適用される傾向にあります。
    一方で談合はしていなくても、予定価格の漏えいなどにより特定の業者が入札で有利になるように協力した場合は、公契約関係競売入札妨害罪に問われます。

    刑罰は「3年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金、またはその両方」です。

  3. (3)収賄

    談合事件においては、発注側である国や自治体の担当者が予定価格などを教える見返りに、業者から金銭などの賄賂を受け取っていることがあります。

    情報漏えいに対する見返りと知りながら金銭などを受け取った場合には、官製談合防止法違反に加えて刑法の収賄罪に問われる可能性があります(刑法第197条)。
    業者側は贈賄罪に該当します。

    刑罰は「5年以下の懲役」(単純収賄罪)です。

4、談合に関与してしまったら弁護士に相談

「談合を持ちかけられて応じてしまった」「社内調査で談合が発覚した」という場合、できるだけダメージを抑えるためには早期の対応が必要です。弁護士に相談しましょう。

  1. (1)談合事件は事業に大きく影響する

    談合が摘発されると、企業の幅広い分野に影響が及びます。

    まず刑事事件として、談合罪や独占禁止法違反の罪に問われます。
    社員が刑事罰を受けたり、企業に罰金が科せられたりする可能性があるほか、公正取引委員会から排除措置命令や課徴金納付命令も出されるかもしれません。

    また談合は世間的なイメージが非常に悪く、事件がマスコミに報じられると企業の社会からの信用は失墜します。その後の取引にも影響がでるかもしれません。
    加えて公共工事への指名停止措置を受けることになるため、経営には大きな打撃となるでしょう。

    行政の職員が予定価格を漏らしたり、見返りに金銭を受け取ったりしていた場合には、市民から行政への信頼も大きく揺らぎます。

    こういった影響を最小限にするためには、警察や公正取引委員会が動く前に、できるだけ早い段階で弁護士に相談し対処することが大事です。

    弁護士はまず事実関係を調べ、法律に違反しているかどうかを確認します。
    違法性が確認された場合は、公正取引委員会への報告や交渉などの対応をします。

    特に公正取引委員会からの課徴金命令については、企業が自主的に談合の事実を報告した場合は、減免される可能性があります。

    具体的には、公正取引委員会の調査が始まる前に、談合などに関わった企業の中で1番最初に申告した企業は課徴金が全額免除されます。2番目以降は順位プラス協力度合いに応じて減免されます。

    すでに逮捕や起訴をされた場合には、弁護士はできるだけ刑が軽くなるよう証拠収集や裁判などの法的手続きを対応します。

  2. (2)逮捕は個人にも大きく影響する

    談合事件では談合の当事者である公務員や企業の社員も当然、責任を問われます。

    官製談合容疑などで逮捕されれば留置場で過ごすことになり、容疑者となった本人はもちろん、その家族もつらい思いをすることになるでしょう。
    起訴されれば刑事裁判も受けなければなりません。有罪判決がでれば前科もつきます。

    また会社をクビになったり、公務員であれば懲戒処分を受けたりする可能性も高く、逮捕によって人生が一変してしまうでしょう。

    そのため談合に関与してしまった場合には、すぐに弁護士に相談して自首などの対応を考えましょう。
    逮捕された場合には、弁護士は取り調べの対応方法などについてアドバイスをします。警察や検察への働きかけなどの弁護活動により、釈放や不起訴につなげられる可能性もあります
    起訴された場合にも、弁護士がいればそのまま裁判をサポートすることも可能です。

    弁護士という味方がいることは、容疑者・被告人にとって精神的にも大きな支えになるでしょう。

5、まとめ

役所や建設会社などで働いている方にとって、談合は決して縁遠い話ではありません。ただし談合事件は会社にとっても個人にとっても影響はかなり大きいといえます。談合に関与してしまい、お悩みの方はすぐにベリーベスト法律事務所 町田オフィスにご相談ください。弁護士がご事情を丁寧にお聞きし、できるだけ良い形で解決できるように最善を尽くします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています