接見禁止の一部解除について。具体的な方法や解除までの流れ

2023年02月20日
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接見禁止の一部解除について。具体的な方法や解除までの流れ

日弁連が公表している弁護士白書によると、令和2年の全国での接見禁止決定数は、3万6008件でした。また、同年の接見禁止決定率(勾留された人数に占める接見禁止決定された人数の割合)は、41%であり、平成12年以降もっとも多い数字となっています。

家族や友人が警察に逮捕・勾留された場合には、すぐにでも駆けつけて話をしたいと考える方も多いでしょう。被疑者が勾留された後であれば、弁護士以外の家族や友人でも被疑者と面会をすることができますが、裁判所によって接見禁止の決定がなされている場合には、弁護士以外の人との面会が制限されることがあります。

このような接見禁止が与えられた場合には、どのように対応すればよいのでしょうか。今回は、接見禁止が与えられた場合に、一部解除する方法や、その流れについて、ベリーベスト法律事務所 町田オフィスの弁護士が解説します。

1、接見禁止について

接見禁止とは、どのような制度なのか、概要を見ていきましょう。

  1. (1)接見禁止とは

    接見禁止とは、勾留されている被疑者や被告人に対して、弁護士以外の者との面会や交信手段を制限する処分のことをいいます。

    被疑者が警察に逮捕された場合には、警察の留置施設において身柄拘束を受けることがほとんどです。逮捕後は、弁護士以外との面会は認められていないため、たとえ家族であったとしても、被疑者と面会をすることはできません。

    また、逮捕には72時間という時間制限があるので、引き続き身柄拘束をするためには勾留という手続きを取る必要があります。
    その後、勾留されてから、弁護士以外の家族や友人なども面会をすることができます。

  2. (2)接見禁止になるケース

    接見等禁止決定をするためには、刑事訴訟法が規定する一定の事由が認められることが必要です。接見が禁止となるケースとしては、以下のケースが挙げられます。

    ① 逃亡のおそれがある場合
    被疑者が住所不定であるような場合には、逃亡のおそれが大きく、もし被疑者が逃亡した場合、その居場所をつかむことが困難であることから、接見禁止処分がなされることがあります。

    ② 容疑を否認している場合
    容疑を否認している場合には、面会した事件関係者との間で口裏を合わせ、証拠隠滅を図るおそれがあるため、接見が禁止になることがあります。

    ③ 組織犯罪を疑われている場合
    容疑を否認していなかったとしても、薬物事件や特殊詐欺事件の容疑で身柄拘束されている場合には、接見が禁止されることがあります。
    このような犯罪については、犯罪組織に捜査が及ぶことがないように、面会をした人との間で口裏合わせがなされる可能性があるためです。
  3. (3)接見禁止によって制限されること

    接見禁止が与えられた場合には、以下のような制限を受ける可能性があります。

    ① 弁護士以外の方の面会禁止
    接見禁止となった場合、家族や友人など、弁護士以外の方は、被疑者と面会することができなくなります。

    ② 手紙のやり取りの禁止
    接見禁止の内容として、手紙のやり取りが禁止された場合、被疑者が手紙を送ることができなくなります。また、被疑者宛てに手紙を送ることもできません。

    ③ 差し入れ・宅下げの禁止
    生活必需品以外の差し入れや、被疑者からの宅下げについては、物品を通じて口裏合わせが行われるおそれがあるため、禁止されることがあります。

2、接見禁止の一部解除とは

接見禁止が与えられた場合には、一部解除という方法によって、面会が可能になる可能性もあります。

  1. (1)接見禁止を解除する方法

    接見禁止になった場合も、すぐに諦める必要はありません。接見禁止を争う方法としては、以下のような方法があります。

    ① 接見禁止決定に対する準抗告
    接見禁止決定が違法である場合には、裁判所に対して、接見禁止決定に対する準抗告の申し立てをすることができます。

    接見禁止決定が違法となるケースは、逃亡や証拠隠滅のおそれがないにもかかわらず、接見禁止決定がなされたような場合です。準抗告の申し立てが認められた場合には、接見禁止決定の全部または一部が取り消されることになります。

    ② 接見禁止の一部解除の申し立て
    接見禁止の一部解除の申し立てとは、裁判所に対して接見禁止の解除を促す手続きになります。

    接見禁止の一部解除の申し立ては、接見を禁止すること自体は違法ではないものの、解除をするよう職権を促す手続きです。
    この申し立ては誰でも申し立てをすることができますので、被疑者の家族や友人だけでなく、恋人や上司などの方でも可能です

    接見禁止の一部解除が認められると、家族に限り、面会が認められることがあります。
    ご家族の方で、どうしても面会をしたいという場合には、接見禁止の一部解除の申し立てを検討してみるとよいでしょう。
  2. (2)接見禁止の一部解除が認められやすいケース

    接見禁止の一部解除の申し立ては、法律上の手続きではなく、裁判所の職権行使を促すという手続きです。そのため、接見禁止の一部解除を認めるかどうかは、あくまでも裁判所の裁量に委ねられていますが、以下のようなケースについては、接見禁止の一部解除が比較的に認められやすいといえます。

    ① 面会するのが事件関係者ではない親族
    接見禁止の目的が、逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれを防止することにあることから、面会をする対象が事件関係者以外の親族であれば、裁判所も一部解除を認める可能性があります。

    ② 起訴された後のタイミング
    起訴前は、捜査の必要性があるため、接見禁止の一部解除の申し立てが認められない場合が多々あります。
    ですが、起訴後であれば捜査も終了しており、証拠隠滅のおそれも低くなりますので、接見禁止の一部解除が認められやすくなります。

    ③ 容疑を認めている
    容疑を認めている場合には、否認している場合に比べて、逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれが低くなりますので、接見禁止の一部解除が認められやすくなります。

3、接見禁止一部解除の方法・流れ

接見禁止の一部解除をする場合には、以下のような方法・流れによって行います。

  1. (1)裁判所に接見禁止一部解除の申し立て

    接見禁止の一部解除の申し立てをする場合には、裁判所に対して接見禁止一部解除の申立書を提出する方法によって行います。

    接見禁止一部解除の申立書には、接見禁止を一部解除する対象者、対象者との間で接見を認める必要性などを詳しく記載する必要があるので注意が必要です。

  2. (2)裁判官が検察官に意見を求める

    接見禁止一部解除の申し立てが受理されると、裁判官は、担当検察官に対して、接見禁止の一部解除に関する意見を求めます。

  3. (3)検察官が裁判官に意見を述べる

    検察官は、裁判官に対して接見禁止一部解除を認めるべきかどうかに関する意見を述べます。裁判官は、検察官の意見を参考にして申し立てを認めるかどうかを判断しますので、検察官が有利な意見を出してくれれば、接見禁止の一部解除が認められる可能性が高くなります。

  4. (4)裁判官の判断

    裁判官は、申立書の内容と検察官の意見を踏まえて、接見禁止の一部解除を認めるかどうかを判断し、一部解除を認める場合には、その旨の決定書を作成して、被疑者に提示され、一部解除された範囲での接見が可能になります。

4、弁護士であれば接見禁止でも接見が可能

身柄拘束をされている被疑者と面会ができないと、家族や友人の方は、とても不安な気持ちになると思います。そのような場合には、お早めに弁護士にご相談ください。

警察に逮捕されてしまった場合には、逮捕期間中だけではなく、勾留中であっても、接見禁止が付された場合には、弁護士以外は面会することができません。弁護士であれば、家族や友人の方が面会できない場合であっても、被疑者本人と面会して話をすることができますので、弁護士を通じて本人の状況を知ることができます

どうしても面会をしたい事情がある場合には、接見禁止の一部解除の申し立てによって希望をかなえられる可能性もあります。
迅速かつ適切に手続きを進めていくためには、刑事事件についての専門的な知識と経験が不可欠となりますので、ご家族が逮捕・勾留されてしまったという場合には、弁護士に相談をすることをおすすめします。

5、まとめ

身柄拘束を受けた方は、家族や友人と面会することができなくなると、非常に不安な気持ちになります。それは、被疑者・被告人の家族や友人も同じ気持ちでしょう。接見禁止が付されていたとしても、準抗告や一部解除の申し立てによって、面会が可能になる可能性もあります。

被疑者・被告人との面会をご希望の方は、ベリーベスト法律事務所 町田オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています