ひとりがすべて相続できる? 実現可否と遺産分割協議書の書き方

2024年09月30日
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ひとりがすべて相続できる? 実現可否と遺産分割協議書の書き方

町田市のサイトでは、「納税義務者が亡くなられた場合の手続きについて」というページ上で、納税義務者が亡くなられた場合であっても課税された税金は相続人に支払い義務があることや、それらの手続きについて記述されています。

親族が亡くなれば、悲しみに暮れてばかりはいられず、相続が発生します。その中でも、さまざまな事情があり、ひとりの相続人がすべて遺産を相続したいというケースもあるでしょう。

本コラムでは、ベリーベスト法律事務所 町田オフィスの弁護士が、どのような場合に、一人だけが遺産を相続することになるのか、遺産分割協議や協議書は必要となるのか、必要な場合における書き方に至るまで、一人がすべての財産を相続するケースについて、注意点などと合わせて具体的に解説します。


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1、ひとりがすべて相続するケースとは

相続では相続財産をまったく分割せずに、一人がすべてを受け取ることがあります。具体的には次のようなケースです。

  1. (1)法定相続人が一人しかいない

    法定相続人となれるのは被相続人(死亡者)の妻や夫のほか、子ども、親兄弟などの血族です。

    相続というと複数人で遺産を分け合うイメージがあるかもしれませんが、被相続人が高齢で両親や兄弟がすでに他界していたり、子どもがいなかったりすると、相続人が一人しかいないことがあります。

    その場合は、必然的に一人が被相続人の財産を相続します

  2. (2)ほかの相続人全員が相続放棄、廃除・欠格

    複数人の法定相続人がいたとしても、ほかの相続人全員が相続放棄をした場合には相続人は一人になります。
    相続放棄をすると、最初から相続人でなかったと扱われるためです

    また、相続人が下記の1から5いずれかの欠格事由というものに該当する場合は、相続人になる資格を失い、遺産を相続できなくなります。

    1. ① 故意に被相続人または相続について先順位もしくは同順位にある者を死亡するに至らせ、または死亡させようとしたために、刑に処せられた者。
    2. ② 被相続人が殺害されたことを知って、これを告発せず、または告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、または殺害者が自己の配偶者もしくは直系血族であったときは除く。
    3. ③ 詐欺または強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、または変更することを妨げた者。
    4. ④ 詐欺または強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、または変更させた者。
    5. ⑤ 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、または隠匿した者。


    さらに、遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者のことをいいます。)が、被相続人に対して虐待をしたり、重大な侮辱を加えたりしたとき、または推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することまたは遺言で廃除することができます。被相続人に廃除された場合、推定相続人は相続人になる資格を失いますので、欠格事由と同様に遺産を相続できなくなります

    以上より、ほかの相続人が欠格事由に該当したり、廃除されたりした場合は、その相続人は相続権を失い、結果として単独での相続になるケースもあります。

  3. (3)遺言で一人にすべて相続させると指定

    遺言書がある場合には、基本的には遺言の内容に従って遺産分割が行われます。

    そのため遺言で「長男にすべての財産を相続させる」などと指定されていた場合には、一人がすべて相続財産を受け取ることができます。

    ただし兄弟姉妹以外の法定相続人には最低限の遺産の取り分である「遺留分」があります

    上述のように遺言で「長男にすべての財産を相続させる」などと指定されていた場合、ほかの兄弟姉妹以外にあたる相続人の遺留分を侵害します。
    そこで、遺留分を侵害された相続人によって、遺留分減殺請求または遺留分侵害額請求をされた場合には、上記のようなすべての財産を一人に相続させるという遺言があっても、遺留分を侵害した相続人に一定の割合で相続財産を分与する必要があります。

  4. (4)遺産分割協議で単独相続に合意

    相続人が複数人いる場合でも「遺産分割協議」とよばれる相続人間の話し合いで合意した場合には、一人にすべてを相続させることが可能です

    ただし遺産分割協議を行う際には、注意すべき点があります。次章で詳しくご説明します。

2、単独相続で遺産分割協議を行う際の注意点とは

相続人が複数人いる場合、またほかの相続人が相続放棄しない場合には、一人だけが遺産を受け取るためには遺産分割協議が必要です。協議の際には、いくつか気をつけておきたい点があります。

  1. (1)全員の合意がなければ成立しない

    相続人が二人以上いて、遺言がなかったり遺言とは違う分割方法を希望したりする場合には、遺産分割協議を行います。

    この遺産分割協議は、相続人全員の合意がなければ成立しません。
    一人がすべての相続財産を受け取ることに誰か一人でも反対すれば、それは実現しません

    相続人にはそれぞれ立場や考えの違いがあるはずです。
    兄弟が不仲であったり、借金を抱えてお金が必要な方がいたりするかもしれません。

    その場合、一人だけが相続し、ほかの相続人が何も受け取れないことに簡単には納得してもらえないでしょう。このような場合、協議は難航が予想されます。

  2. (2)相続人の調査、財産の確認をしておく

    遺産分割協議の成立には全員の合意が必要ですが、愛人との間の子どもなど、まれに協議後に新たな相続人が現れることがあります。

    その場合には、原則として協議をやり直さなければいけません。

    また相続を終えた後に、別の相続財産が見つかることもあります。
    その場合にも、協議書に特別の記載がない場合はあらためて協議を行わなければいけません。

    遺産分割協議をし直すのは非常に面倒で、トラブルにもなりやすいといえます
    それを防ぐためにも、協議をする際は、財産の洗い出しや相続人の調査を徹底しておきましょう。

  3. (3)遺産分割協議書を必ず作成する

    話し合いにより一人が相続することに全員の合意が得られた場合には、必ずその内容を遺産分割協議書にしておきましょう。

    合意ができていれば、協議書がなくてもその内容に従った相続は可能です。
    ですが書面にして証拠として残しておかなければ、後になって相続人の誰かが「自分は同意なんかしていない」と言い出す可能性があります

    協議書は不動産を相続人名義に相続登記する際に必要ですので、必ず作成しましょう。

3、一人が相続する場合の遺産分割協議書の内容

相続人全員による遺産分割協議が成立したら「遺産分割協議書」を作成しましょう。一人が相続する場合の内容は、次を参考にしてください。

  1. (1)遺産分割協議書に必要な内容

    遺産分割協議書に必要な基本的内容は以下の通りです。

    • ・ 被相続人に関する情報(氏名、死亡日、住所など)
    • ・ 「相続人全員は協議により、被相続人の遺産を次のとおり分割する」「相続人全員の協議により、下記のとおりの遺産分割協議が成立した」など、協議成立を示す文言
    • ・ 具体的な遺産の内容と分割方法
    • ・ 協議書に記載されていない遺産が見つかった場合の対応方法
    • ・ 遺産分割協議に参加した全員の署名・押印
    • ・ 協議書作成の日付


    このほかに、葬儀費用の負担や債務の扱いなどを記載することもあります。

  2. (2)協議書のポイント

    「一人だけが相続する」という内容の書き方に決まりはありません。

    たとえばAさんが相続する場合には、相続財産を一つ一つ書き、それぞれに「Aは以下の遺産を取得する」と記載する方法が考えられます。

    「被相続人の財産はすべてAが取得する」という記載も可能ですが、相続財産を不動産や動産、預貯金など項目別に分けて示してAが相続する旨を書く方が、全容がわかってほかの相続人も納得しやすいでしょう。

    なお不動産は登記簿謄本通りに、預金は支店や口座番号まで、できるだけ具体的に記載してください。

    また「協議書に記載のない遺産は、Aが取得する」「再度協議を行う」などと、協議書作成後に見つかった遺産の扱いについても書いておけば、後々の争いが防げます

    債務が見つかった場合の対応方法も書いておきましょう。

    協議後に借金が見つかった場合、債権者は相続分に応じて遺産を受け取っていない相続人にも返済を求めることができます。
    債務返済を求められた相続人は納得がいかないでしょう。
    そのため事前に扱いを決めて明記しておくことをおすすめします。

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4、弁護士に依頼したほうがよいケース

一人がすべての遺産を相続することは可能ですが、トラブルになることも珍しくありません。その場合はすぐに弁護士に相談しましょう。

  1. (1)ほかの相続人に納得してもらえない

    複数の相続人がいる場合、遺言書に記載されていたとしても、一人だけが遺産を受け取ることに簡単には納得してもらえないでしょう。
    「納得できない」「独り占めするなんて許せない」などと言われ、大きな争いに発展する可能性もあります

    そこで第三者である弁護士が介入すれば、感情的になっていた相続人も冷静になり、法律の専門家のアドバイスだからと耳を傾けてくれるかもしれません。

  2. (2)遺産分割協議書の作成方法がわからない

    遺産分割協議書には決まった書式がありません。
    ですが遺産の内容を具体的に示す、全員の署名押印があるなど、守っておくべきこともあります。

    インターネットで検索すればテンプレートも見つかりますが、サイトによって内容が違います。適当に作ってしまえば相続手続きの際に役に立たない可能性もあります
    また忙しくて作成する時間がない方もいるでしょう。

    相続に詳しい弁護士に依頼すれば、手間が省けるうえに間違いのない協議書を作ってもらえます。

5、まとめ

親族が亡くなられると、同時に相続が発生します。相続人となる方がおひとりしかいない状況であれば、悲しむ間もなく手続きなどを一人で行う必要があり大きな負担となるでしょう。他方で、複数相続人がいるもののお一人がすべて相続する、というケースがあります。そのようなケースでは、ほかの相続人と必ず遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成することをおすすめします。

協議がスムーズに進めばよいのですが、実際のケースにおいては、相続人間でさまざまな争いが起きたりして苦しむ方は少なくないようです。しかし、相続についての知見が豊富な弁護士が介入することにより、スムーズに進めることが可能となるケースが多々あります。相続のトラブルは弁護士に相談するのが最善です。どうぞベリーベスト法律事務所 町田オフィスにご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています